初彼岸とは?
初彼岸とは、亡くなった人が四十九日を過ぎてから初めて迎える彼岸を「初彼岸」といいます。
仮に忌中の期間に彼岸が来た場合、次の彼岸のタイミングに初彼岸は繰り越されます。
初彼岸は別名「初盆」とも呼ばれており、地域に寄っては普段のお彼岸と異なりお供え物を豪華にするなどの違いもあります。
「初彼岸」と「お彼岸」はどう違うの?

基本的な流れは普段のお彼岸と変わりません。
お彼岸は日本独自で生まれた風習の一つで、仏教の教えには「あの世(彼岸)に一番近いお彼岸の時期に、この世(此岸)が最も近づく」
このように伝えられています。
お彼岸の期間は苦悩や煩悩の水が多い川が流れると言われており、その川を現世の姿のまま渡るための船が必要となり、それが仏教の「六波羅蜜行」と呼ばれる修行です。
誤った道に進まないように正しい知識を身に付けるための6つの修行を指し、お彼岸の期間で1日1日全ての修行を行う事で彼岸に近づくと言われています。
あの世が最も近づく期間なので、お彼岸ではご先祖様や亡くなられた故人を偲び、供養する事を目的にお墓参りやお供えなどが行われています。
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お彼岸の期間

お彼岸は春と秋の年2回あります。
期間としては春分の日と秋分の日を基準に、それぞれ当日と前後3日間合わせた7日間となります。
春分の日と秋分の日は年度によって日程が異なりますが、例として
・春分の日・・・3月20日の場合、3月17日~23日までの期間
・秋分の日・・・9月23日の場合、9月20日~26日までの期間
これらのお彼岸の期間は昼と夜の長さが同じになると言われており、その事からお彼岸と此岸の距離が最も近くなると言い伝えられています。
そのため、このお彼岸の期間はご先祖様や故人に想いなどが伝わりやすいといわれています。
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初彼岸ですること

初彼岸もお彼岸も基本的には行う内容に大きな違いはありません。
初彼岸の場合、掃除を念入りに行ったり、生前好きだった食べ物を備えるなど初めて故人を偲ぶという事を念頭に置くといいでしょう。
一番大切な事は、ご先祖様や故人に感謝の気持ちを持って供養を行う事です。
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お墓参り
まずお墓参りが最初に行う行事となります。
お墓参りに行く時は、家族や親類など大人数で行く事が多いと思いますがお墓参りを行う前に掃除をしなければいけません。
お墓参りの時に持っていくと良いものとして
● タオル
● バケツ
● 軍手
● ブラシ
次にお参りの際に必要なものとして
● お線香
● マッチやライター
● お供え物
慌ててお墓参りに向かうと、意外と忘れ物をする事も多いので出発前に順番に確認しておきましょう。
お彼岸のお墓参りはいつ行けばいいか解説←知りたい方はこちら
仏壇の掃除
次に自宅や実家の仏壇の掃除です。
仏壇の掃除は、余裕があればお墓参りの前に行っておくと、その後の行動が楽になります。
仏壇の掃除の手順として
1. ご先祖様や故人に失礼がないよう、事前に「これから仏壇の掃除をします」と報告してお参りします
2. ほこりなどが溜まっている可能性があるので、窓を開けて換気します
3. 配置を忘れると戻せなくなるので、掃除前に仏壇の写真を撮っておく
4. 順番に仏壇の掃除を始める
仏壇の掃除を行う際に、注意点として薬剤などを使用して徹底的に綺麗にしようとすると仏具のメッキなどが剥がれる恐れがあります。
そのため、乾拭き程度で抑えておくのが仏具を長持ちさせるポイントとなります。
仏壇掃除に必要なものとして
● 毛払いなどのほこり落とし
● タオル
● 灰ならし(香炉の灰を綺麗にする)
仏壇の掃除が終わったら、改めて掃除が終わった事を報告しお参りして終わりとなります。
お供え物を供える
お供え物については、故人が好きだったものを供えるのが一番喜ばれるお供え物となります。
何をお供え物にしたら良いか分からない時は季節の果物や和菓子、菓子折りなどが一般的です。
出来れば日持ちするものやお供え物を下げた時にみんなで分けやすい個包装のものであれば、後日家族や親戚と食べながらゆっくり話などもできます。
注意点として、あまり高額なお供え物をすると、返礼品を返す時に気を遣う事もあるので無理して高いものなどは買ったりしないようにしましょう。
お彼岸のお供え物の彼岸団子とは?←興味ある方はぜひ!
お寺の彼岸会などに参加する
ご先祖様や故人をなぐさめるために、お彼岸の時期に多くの寺で「彼岸会」と呼ばれる合同供養が行われます。
彼岸会はお寺で行う事が多いですが、地域によっては自宅に招いて行う場合もあります。
お供えものも準備して行きますが、この時のお供えものも特に定めがないので、故人が好きだったものでも構いません。
基本的には何でもいいのですが、春のお彼岸は「ぼたもち」で秋のお彼岸は「おはぎ」をお供え物として持っていくのが一般的となっています。
ぼたもちとおはぎは名称は異なりますが、共に同じ食べ物です。
これらに使用する「小豆」は邪気を祓い、魔を除ける効果があると言われており、通例となっています。
彼岸会とは?意味・お布施のマナー・服装を解説
香典とは?
香典とは、ご先祖様や故人の霊前に供える花やお香に変わる金銭をいいます。
葬儀などでも香典を出すかと思いますが、実家などで初彼岸を行う場合、再度香典は必要となります。
線香をあげるだけだから香典はいらないと感じる方もいるかもしれませんが、これはマナーとして持っていきましょう。
彼岸会などに参加する場合は、「お布施」といって香典に変わるものを僧侶に渡します。
浄土真宗の香典袋は特殊?←詳しく解説!
香典の一般的な相場
お彼岸の香典の相場は
● 3,000~5,000円が一般的な金額となります
● 生前、世話になっていたり、親睦が深かった場合5,000~10,000円
この金額は目安なので一緒に参列する親族などと金額を統一させるよう事前に相談して値段を決めるといいでしょう。
また、あまりに高額の香典を渡すと、相手方に気を遣わせる事もあるので注意が必要です。
彼岸会に参加した時のお布施の金額は
● 10,000~30,000円が一般的な金額となります
● 自宅などに僧侶を招いた場合、上記の金額に合わせて交通費10,000~30,000円も別途包みます
注意点として、偶数や忌み数は避けましょう。
偶数は割り切れる数字となり、忌み数は4と9が当てはまりますが、これらは「死」と「苦」を連想させる数字と共に縁起が悪いと言われています。
香典などでも避けるべき数字ですが、結婚式などの祝い事でも避けるのがマナーです。
のし紙や香典袋、不祝儀袋について

お金を入れる袋は「のし袋」「香典袋」「不祝儀袋」などと呼ばれていますが、どの袋も同じものです。
香典袋の水引は、白黒・双銀・黄白が一般的です。
袋は中袋と外包みに分かれ、中袋にはお金・金額・連絡先を記入し、外包みには表書きを書きます。
一方、お布施袋は奉書紙と呼ばれる無地の白い袋を使用します。
お金を半紙で包み、さらに奉書紙で包んでから表書きを記入します。
水引は不要で、奉書紙がない場合はのし袋で代用可能です。
香典袋とお布施袋の書き方
香典袋の書き方
仏教の場合、表書きには以下のいずれかを記入します。
● 御仏前
● 御佛前
● 御供物料
その下(水引の下)にフルネームで名前を記入します。
香典袋の中袋の書き方
● 裏側の右側に金額を漢数字で記入
● 左下に自分の連絡先と名前を記入
● 中袋がない場合は、外包みの裏側に記入
お布施袋の書き方
● 表書きには「御布施」と記入し、その下にフルネームを書く
● 交通費などを渡す場合は、「御車代」と別の袋に記入
● 中袋の書き方は香典袋と同じ
香典袋、お布施袋どちらも薄墨はマナー違反となるため、必ず濃い墨で記入しましょう。
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お金の入れ方
お金の入れ方は、中袋に対してお札の肖像画が表を向くように、肖像画が下に来るように入れます。
また、複数のお札を入れる場合はそれぞれのお札を揃えてから入れます。
葬儀などの時は新札を使用する事は死期を予測していたと言われ不適切となりますが、初彼岸の場合、予定が周知されている状況なので新札を使っても問題ありません。
準備ができたら、香典袋などを「袱紗(ふくさ)」に入れましょう。
渡すタイミング
香典を渡すタイミングはなるべく早く渡しましょう。
ご挨拶の際「どうぞお供え下さい」などと伝えすぐに渡しても問題ありません。
最初に渡すタイミングがない時も、お参りをして線香をあげた後、ご遺族の方に渡しても大丈夫です。
コンビニや100均の香典袋でも大丈夫?
正しく選べば、コンビニや100均の香典袋を使用しても問題ありません。
ただし、以下のポイントに注意して選びましょう。
選ぶべき香典袋の条件
● 表書きが「御仏前」になっているもの(初彼岸では「御霊前」はNG)
● 水引が「黒白」または「双銀の結び切り」
● シンプルで落ち着いたデザインのもの
● 包む金額に合ったサイズのもの(お札が折れずに入るか確認)
避けるべき香典袋
● デザインが派手なもの(和柄や装飾が多すぎるものは避ける)
● 「御霊前」と書かれているもの(初彼岸では「御仏前」が正解)
● 水引が蝶結びのもの(弔事では「結び切り」を使う)
● 1万円以上を包む場合(100均よりも、文具店や仏具店のしっかりしたものを選ぶのが無難)
コンビニや100均の香典袋を使う際のワンポイント
✅ 筆ペンで丁寧に記入する(きれいに書くことで印象が良くなる)
✅ お札の向きを正しくする(肖像画を裏側・下向きに入れる)
✅ 袱紗(ふくさ)に包んで持参するとより丁寧な印象に!
➡ 100均にも挟むタイプの袱紗が売られているので、活用するのもオススメです。
初彼岸での返礼品
一般的な香典をもらった時は返礼品を返すのが通例となっています。
一方初彼岸の香典返しとして、返礼品を考えてる方も多いと思いますが、初彼岸自体身内で行う事が大半なので、基本的には返礼品は不要です。
しかし、返礼品を返さないと関係が悪くなるかもしれないなどを考慮した時は返した方が無難と言えます。
返礼品の品物
返礼品の相場はおおよそ香典の半額〜3分の1程度が常識となります。
したがって、返礼品にあまり高額なものを返すのは、かえって気を遣われる事となり不適切です。
品物はお茶や海苔など、比較的すぐ消費するものがいいでしょう。カタログギフトなどもオススメです。
のしの書き方
のしの表書きは「志」や「粗供養」と書きます。
水引は白黒の結び切りのものを使用して下さい。地域によって異なる場合もあるので、事前に確認を忘れないようにしましょう。
お彼岸のお供え物には掛け紙?熨斗(のし)紙?←書き方やマナーも解説!
すぐに返礼品を渡せない場合の対応
初彼岸の香典のお返しは、頂いたその場で感謝の意を込めて直接渡します。
準備不足などで場合によってはすぐに渡せない事もあります。
そのような時は、初彼岸が過ぎてからお礼状を添えて別途郵送で送りましょう。
家が近い場合は、直接持っていっても構いませんが相手方の都合もあるので、できるだけ郵送で送った方が賢明です。
初彼岸の服装
服装については、基本的に私服でも問題ありませんが、失礼と感じる場面では平服(略喪服)で行く事で相手に不快な想いをさせる事はありません。
こちらでは、それぞれのシチュエーションごとの服装について解説します。
お墓参りに行く時
お墓参りに行く時は、普段着慣れた服で行くといいでしょう。
お墓の掃除や草むしりなどで汚れる可能性もあり、動きやすい服装の方が作業がしやすい点も含めて普段着で行きましょう。
実家など家にお参りに行く時
実家などにお参り行く時も、普段着で問題ありませんが相手方に失礼だと感じる場合は平服で行くのが適切です。
こちらは状況に応じて、親類などに一度相談してから当日の服装は決めましょう。
彼岸会に参加する時

彼岸会に参加する際やご自宅に招く時は、必ず平服(略喪服)で参加しましょう。
特別決まりはありませんが、僧侶がいる前での普段着はマナー違反とされる事もあります。
しっかりとした平服(略喪服)ではなく、フォーマルな服装でも問題ないので、事前に準備しておきましょう。
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よくある質問
初彼岸でやってはいけない事は?
結論として、初彼岸にやってはいけないとされる明確な決まりはありません。
ただし、お祝い事(結婚式・新築祝い・新車の納車など)は避けるのが無難です。
決まりではありませんが、ご年配の方が不快に感じることもあります。
また、病院へのお参りは「死」を連想させるため控えるのが一般的です。水遊びも「霊を引き寄せる」と言われることがあり、子どもが遊びすぎないよう注意しましょう。
お彼岸とお盆の違いは?
お彼岸は先祖を敬い、供養する行事であり、お盆は先祖を家に迎え入れる行事です。
お彼岸では、お墓参りや仏壇の掃除、供物を供えて手を合わせることで、ご先祖様への感謝を伝えます。
一方、お盆では、迎え火を焚いてご先祖様を家に迎え、精霊棚を設けて供養し、送り火でお見送りをします。
期間も異なり、お彼岸は年2回(3月・9月)、お盆は8月13〜16日(地域によって異なる)です。
お彼岸とお盆の違い←詳しく知りたい方はこちら
どうしても初彼岸にお参りできない場合
初彼岸は時期が決まっていますが、仕事などの都合でどうしてもお参りできない事もあるかと思います。
そのような場合でも、決して初彼岸の時期に行かなければいけないというルールはなく、自分の都合の良いタイミングでお参りしても全く問題ありません。
1番大切な事は、ご先祖様や故人を偲ぶ気持ちなので、その気持ちを忘れずにお参りするようにしましょう。
お彼岸にお墓参りに行けない...←そんな悩みの解決方法をご紹介
お供えしたものは食べていいの?
お供えしたものは「お下がり」として食べることが供養につながるため、食べても問題ありません。
一般的には当日の夕方から翌朝までに食べるとされていますが、厳密な決まりはありません。
また、残さず食べることで供養になるだけでなく、食品ロス削減にもつながります。
お供えする物の注意点として、生ものや臭いの強いものは避けるのがマナーです。
特に肉などは「殺生」を連想させるため不適切とされ、生前好きだった場合も別のもので代用するのが無難です。
まとめ

お彼岸は聞いた事があっても、初彼岸はあまり知られていないのが現状です。
違いなどについても解説しましたが、特別大きな違いはなく普段のお彼岸と同じように過ごしていけば問題ありませんのでそこまで心配しなくても大丈夫です。
中にはタブーとされている事もあるので、初彼岸の流れは一通り頭に入れて、粗相のないよう過ごして下さい。