水子供養とは?
水子供養とは、流産、死産、中絶などで命を失った胎児や赤ちゃんを供養する仏教の儀式です。
この供養は、亡くなった赤ちゃんの魂を慰めることと、親の心の整理を助けることにあります。
以下では、起源、行う理由、行う対象について詳しく解説します。
起源
江戸時代に浄土宗の僧侶が、水子に戒名を授けて供養を始めたことが、水子供養の起源とされています。
当時の仏教では、亡くなった子ども(水子)が「賽の河原」という場所で苦しんでいると考えられ、これを救済するための供養の考え方として広がりました。
また、古代には亡くなった胎児や乳児を川に流して弔う風習があり、水子供養や流し雛など現代の儀式に影響を与えています。
その後、1970年代頃から水子の「たたり」を恐れる風潮が広がり、供養が広く行われるようになったものの、現在では赤ちゃんへの感謝や親の心の安らぎを目的とした形に変化しています。
水子供養の歴史を知ることで、その意義が「たたり」を避けるものではなく、赤ちゃんの冥福を祈り、親が心を整理するための行為であることが分かります。
賽の河原(さいのかわら)とは
賽の河原は、亡くなった子供の魂が石を積んで親を待つとされる場所です。
亡くなった子供たちは親に先立つことを罪とされ、そこで苦しむとされています。
そのため、親や家族が供養をすることで子供の魂を救い、成仏させると考えられています。
この考えが水子供養の由来の一つとも言われています。
水子供養を行う理由
水子供養を行う理由は、赤ちゃんの冥福を祈ることと、親自身の心のケアにあります。
赤ちゃんを失う経験は、両親にとって非常につらいものです。
その後悔や罪悪感を軽減し、心を整理するために、多くの人が水子供養を行います。
ただし、供養の形は一つではありません。
お寺での正式な儀式に限らず、家庭で手を合わせるだけでも十分に意味があります。
親にとって大切なのは、赤ちゃんへの思いを大切にしながら心の整理をすることです。
水子供養を行う対象
水子供養の対象は、流産、死産、中絶などによって命を失った胎児や赤ちゃんです。
妊娠週数に関係なく行われる場合も多いですが、寺院や宗派によっては細かな違いがあります。
妊娠12週未満で亡くなった赤ちゃんを供養するべきか迷う方が多い理由の一つに、「稽留流産(けいりゅうりゅうざん)」があります。この流産は妊娠6〜9週目頃の初期に起こることが多いためです。
さらに、妊娠12週未満で赤ちゃんが亡くなった場合には、死産届の提出が不要なため、供養の判断が難しくなることも関係しています。
12週未満の流産や中絶についても親が希望すれば供養を行うことが一般的です。
水子供養はしない方がいいの?
水子供養は「しない方がいい」とは言い切れません。
仏教の教えでは、水子の祟りや罰は存在せず、供養は亡くなった赤ちゃんを悼み、親が心を整理するための行為です。
形式にとらわれず、自分の気持ちに合った方法で赤ちゃんを想うことが大切です。
なぜ「供養しないほうがいい」という意見があるのか
「水子供養はしない方がいい」と言われる背景には、誤解や偏見が含まれていることが多いです。
以下のようなものがあります。
1.経済的な負担が大きいと思われがち
一部の寺院で高額な費用を求められる例があったため、「金儲けのための儀式」との印象を持たれることがあります。
ただ実際は、多くの寺院では明確な費用設定があり、金銭的な不安を抱える必要はありません。
個別供養だと1霊あたり1万円~3万円程度ですので負担が大きいというわけでは無いでしょう。
2.浄土真宗では行わないから
浄土真宗では「亡くなった命は阿弥陀如来によって救われる」とされ、水子供養という儀式自体を行わない場合があります。
この宗教観の違いから、「供養しなくても大丈夫」との考え方が広まることもあります。
水子供養しないとどうなるの?
結論から言うと、供養をしないことで「たたり」や「不幸」が起こることはありません。
仏教の教えでは、亡くなった赤ちゃんは穏やかな存在であり、親を恨んだり、苦しめたりすることはないとされています。
そのため、「供養をしないことで赤ちゃんが祟る」といった話は、根拠のない迷信にすぎません。
水子供養の本質は「たたりを防ぐため」ではなく、親が心を整理し、亡くなった命を思いやる行為にあります。
なので、たたりを気にして水子供養を行う必要はないのです。
中絶した場合でもたたられない?
中絶をしたことで「水子にたたられるのでは?」と不安を抱く人も多いです。
しかし結論として、水子のたたりは存在しません。
仏教をはじめとする宗教的な視点では、水子は清らかで優しい存在であり、親を害することはないとされています。
水子は親を怨むどころか、幸せを願っています。親が悲しむことは水子にとっても辛いことなのです。
たたりの起源
たたりの考え方は、昭和期に広まった商業的な水子供養が背景にあります。
「水子を供養しないと不幸になる」と恐怖を煽る広告がきっかけでした。
しかし、仏教の経典には水子のたたりを示唆する記述は一切ありません。
水子供養を行うタイミング
水子供養を行うタイミングは、明確なルールや期限はありません。
それぞれの家庭の事情や、親御さん自身の気持ちの整理がついたタイミングで行うのが一般的です。
流産や中絶、死産などで赤ちゃんを失った時の悲しみは、言葉で言い表せないものです。
そのため、無理をして供養を急ぐ必要はありません。
水子供養をいつまで続ける?
水子供養をいつまで続けるべきかという問いに、明確な答えはありません。
供養の期間は人それぞれであり、赤ちゃんを思う気持ちや家庭の状況によって異なります。
一般的には一周忌や三回忌まで
多くの方は、一周忌や三回忌といった仏教の節目に合わせて供養を続けています。
その後は、七回忌や十三回忌など、区切りの良い年にお参りを行う方もいます。
また、お子さんが成人する年齢である20年目を目安に供養を終える方も少なくありません。
どのタイミングで供養を終えるか迷った場合は、お寺や専門家に相談するのも一つの方法です。
供養の目的は、親御さんの心を癒すことです。無理をして供養を続ける必要はありません。
水子供養を行う場所は3つ
寺院
寺院では、水子供養を受け付けていて、菩提寺がない場合でも、対応してくれる寺院が多いです。
供養の方法としては、僧侶による読経や、水子地蔵へのお参りなどがあります。
事前に予約や問い合わせを行い、供養の流れや費用を確認すると良いでしょう。
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神社
一部の神社でも、水子の慰霊を行っています。
ただし、お寺より対応している神社は限られているので、事前に確認が必要です。
神社での供養は「祈祷」として行われることが多く、霊璽(れいじ)と呼ばれる位牌に相当するものを作成し、神棚に祀る方法があります。
自宅
寺院や神社に出向くことが難しい場合、自宅で供養を行うことも可能です。
簡易的な仏壇を用意し、毎日手を合わせる、写経や写仏を行うなど、自分なりの方法で水子の冥福を祈ることができます。
こういった行為でも立派な供養となります。
水子供養の方法と費用
水子供養にはさまざまな方法があり、どれを選ぶかは親御さんの気持ちや状況に合わせて決めることができます。
代表的な供養方法を詳しく紹介します。
①石積供養
石積供養は、亡くなった赤ちゃんのためにて石を積み上げて供養をする方法です。
なぜ石を積み上げるかというと、仏教では「賽の河原」で亡くなった子供が石を積むとされ、その行為を親が代わりに行うことで成仏を願います。
石には赤ちゃんの名前や、祈りの言葉を刻むことも可能です。
一般的な費用は、5千円~3万円となります。
②永代供養
永代供養は、寺院に供養を任せることで、長期間にわたって赤ちゃんの霊を供養してもらう方法です。
永代供養は、個別供養と合同供養に分かれています。
個別供養:赤ちゃん専用の供養スペースで、個別に供養を行います。費用は高めですが、手厚い供養が特徴です。
合同供養:他の水子供養と一緒に供養を行う方法です。費用を抑えたい方に向いています。
13回忌や33回忌、永代にわたって供養を続けるプランが一般的です。
永代供養の費用は、3万円から20万円程度が相場です。
③写経や写仏による供養
写経や写仏は、自宅で行える供養方法です。
仏教経典を一文字ずつ丁寧に書き写したり、仏像やお地蔵様の絵を模写することで、亡くなった赤ちゃんの冥福を祈ります。
写経を行う際には、般若心経などの経典を用いることが一般的です。
般若心境とは?唱えてはいけないの!?
写仏は絵心がなくても問題はありません。
集中して絵を模写することで、心が落ち着き、祈りが形になるとされています。
写経、写仏は、用紙や筆、墨汁などの道具を揃えるだけで始められます。
写経、写仏のキットは通販でも購入でき、千円~3千円程で購入可能です。
④戒名を付けてもらう
戒名は仏教で使用される霊名で、亡くなった赤ちゃんに名前を付けて供養を行います。
名前を付けることで、赤ちゃんの存在をしっかりと受け止め、その魂を安らかにすることができます。
費用は、一般的には1万円〜5万円程度が目安です。
⑤塔婆をたてる
塔婆(とうば)は、木で作られた供養の板で、亡くなった赤ちゃんの魂を思い、祈りを捧げる方法です。
塔婆には「○○家水子之霊」といった形で赤ちゃんの名前や祈りの言葉を書きます。
そうすることで、赤ちゃんが安心して成仏できるよう願う気持ちを形にします。
費用は1枚あたり5千円〜3万円程度が一般的です。
⑥位牌供養
位牌供養は、赤ちゃんの名前や戒名を刻んだ位牌を仏壇や寺院に祀り、日々手を合わせる供養方法です。
位牌には亡くなった赤ちゃんの霊が宿るとされ、親としての想いや祈りを形にする役割を担っています。
自宅で毎日赤ちゃんのことを祈り、身近に感じられる良さがあります。
位牌の作成費用は、1万円〜5万円程度が相場です。
⑦手元供養
手元供養とは、赤ちゃんの遺骨や思い出の品を自宅で供養する方法です。
仏壇を持たない方や、お墓に遺骨を納めることが難しい方にも合った供養方法です。
遺骨を小型の骨壺に入れる骨壺供養や、遺骨の一部をアクセサリーに収めて身に着ける遺骨ペンダントなどがあります。
赤ちゃんを身近に感じられる良さがメリットです。
費用は、小型骨壺だと5千円~2万円、ペンダントだと1万円~5万円程度です。
⑧お墓に入れる
赤ちゃんの遺骨をお墓に納めることも、水子供養の一つの方法です。
先祖代々のお墓に供養することで、長く供養を続けやすいという特徴があります。
費用としては、納骨手数料や墓誌への彫刻費用などが掛かり、3万円~10万円が目安です。
⑨地蔵奉納
お寺に水子地蔵を奉納(納める)ことで、供養をする方法です。
水子地蔵は、三途の川の「賽の河原」で苦しむ子供たちを救い、成仏させる役割を持つとされています。
基本的に水子地蔵はお寺で用意してくれていて、費用は5万円~15万程度が一般的です。
⑩水子絵馬を奉納する
絵馬は、祈りや願いを文字にして書き残す日本の伝統的な文化です。
水子供養では、亡くなった赤ちゃんの名前や祈りを絵馬に記して奉納することで、成仏を願います。
水子供養を行う寺院や神社には、専用の絵馬掛けが用意されていることが多いです。
絵馬の費用は、5百円~2千円程度が一般的です。
水子供養の持ち物
数珠(じゅず)
数珠は、仏事や供養の際に使用する大切な道具です。
祈りを捧げる際に手に持つことで、心を落ち着ける助けとなります。
もし持っていない場合は、仏具店やオンラインショップで購入できます。価格は千円程度からありますが、特別なものを選ぶ必要はありません。
お花
供養のお花としては、白や淡い色の花が一般的です。
菊やユリ、カーネーションなどが選ばれることが多いですが、赤ちゃんを想って好きな花を用意するのも良いでしょう。
お供え物
赤ちゃんが喜びそうなお菓子やおもちゃを供えることが一般的です。
例えば、クッキーやキャンディ、ぬいぐるみや小さな玩具などがよく選ばれます。
供養の後、持ち帰る場合もあるため、あまり大きなものは避けましょう。
エコー写真
赤ちゃんの姿が写ったエコー写真を持参する方もいます。
供養の際に写真を供えることで、赤ちゃんへの想いをより深く伝えられると考えられています。
また、写真をお焚き上げしてくれる寺院もありますので、事前に確認しておきましょう。
ご遺骨
赤ちゃんの遺骨を持っている場合、持参を求められることがあります。
ご遺骨を持参しない場合でも、供養は可能です。
お布施
お布施は供養をお願いする際の感謝の気持ちとして渡します。
金額の相場は3千円〜3万円程度です。
お布施は白い封筒や袱紗(ふくさ)に包んで持参し、表書きに「御布施」と書くのが一般的です。
寺院に確認して適切な金額を準備しましょう。
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水子供養の服装マナー
水子供養に参加する際の服装は、厳格な決まりはありませんが、落ち着いた服装を選ぶことが大切です。
男性の場合
服装
黒、紺、グレーなどのダークカラーのスーツや、白いワイシャツにスラックスが適しています。
足元
黒の革靴が望ましいです。
小物
黒や落ち着いた色合いのネクタイ。
女性の場合
服装
黒や紺のワンピース、ブラウスとスカート、またはスーツが適切です。露出の少ないデザインを選びましょう。
足元
黒や紺のパンプスが適しています。
小物
派手なものは避け、パールネックレス程度にとどめます。
注意点
・ジーンズやTシャツ、サンダルなどのカジュアルすぎる服装はNG
・赤や明るい色、目立つ柄はNG
・ノースリーブや短いスカートなどの露出の多い服装はNG
水子供養の流れ
寺院や僧侶への連絡
供養を希望する寺院や僧侶に連絡し、供養の日程や詳細を相談・予約します。
当日の受付・申し込み
供養当日、寺院の受付で水子供養の希望を伝え、必要な申し込み手続きを行います。
供養の実施
僧侶による読経や法要が行われます。
供養の形式や内容は寺院や宗派によって異なりますが、一般的には読経や焼香などが含まれます。
供養後の挨拶・退出
供養が終了したら、僧侶や寺院の方々に挨拶をし、退出します。その際、感謝の気持ちを伝えると良いでしょう。
よくある質問
水子供養はお参りだけでも大丈夫ですか?
水子供養はお参りだけでも十分です。
寺院の水子地蔵に静かに手を合わせることで、赤ちゃんへの祈りを捧げることができます。
お地蔵さんに手を合わせてはいけないとよく聞くけど、その真意は?↑詳しく知りたい方はこちらも
形式よりも赤ちゃんへの思いを大切に、自分に合った供養の形を選びましょう。
まとめ
この記事では
・水子供養の基礎知識
・水子供養をしない方がいいのか
・供養の行い方
などを解説してきました。
迷いや不安がある方も、この記事が判断材料となり、納得のいく形で赤ちゃんへの想いを形にしていただけることを願っています。