手元供養とは?種類・費用・メリットから法律まで徹底解説
最新編集日:2025年10年29日
お墓が遠くてお参りが難しい、仏壇を置くスペースがないといった理由から、新しい供養の形である「手元供養」を選ぶ方が増えています。
この記事では、手元供養の基本から種類や費用、メリット・デメリット、さらには宗教や法律の疑問まで、わかりやすく解説します。
〈記事を読んでわかること〉
● 手元供養の意味
● 手元供養の種類と費用
● 手元供養のメリット・デメリット
● 手元供養がNGは?違法なのでは?
この記事が、故人を想う気持ちを大切に、あなたらしい供養の形を見つけるお役に立てたなら幸いです。
手元供養とは?
手元供養とは、故人のご遺骨の全部または一部を、自宅などの身近な場所で保管する供養方法のことです。小さな骨壷に納めて飾ったり、アクセサリーにして身につけたりと、さまざまな形で故人を偲ぶことができます。お墓や仏壇の代わりに手元供養を選ぶ方もいれば、散骨や樹木葬と併用する方もいて、供養の形は人それぞれです。
手元供養が増えている理由
仏事関連総合サービスの株式会社メモリアルアートの大野屋が、2018年に行った調査では、手元供養商品を持つことに「抵抗がない」と答えた方は61%に上りました。また、同社の手元供養商品の売上は、2010年の取り扱い開始から10年弱でおよそ7倍に増えたと発表されています。この数字から、手元供養は新しい供養の形として広まっていることがわかります。
手元供養が広まっている理由は以下の2つに集約されます。
1. お墓を持たない(持てない)人が増えているから
2. 故人をそばで供養したい人が増えているから
「子どもがいない(誰もお墓を継いでくれない)」「将来子どもに管理の負担をかけたくない」といった理由でお墓を持たない方は確実に増えています。経済的な理由でお墓を購入できない方も多いでしょう。お墓がなければ、遺骨は自宅に安置するしかありません・・。また「故人にずっとそばにいてほしい、いつも一緒にいたい」という理由で手元供養を選択する方も増えています。
手元供養には全骨安置と分骨安置がある
手元供養には、大きく分けて「全骨安置」と「分骨安置」の2つの方法があります。
全骨安置:
ご遺骨の全てを手元に安置する供養方法です。故人が標準的な体格なら、6寸〜7寸(直系18cm〜21cm、高さ21cm〜25cm)の骨壺にご遺骨全てが納まります。
分骨安置:
ご遺骨の一部はお墓(樹木葬、納骨堂、一般墓など)に埋葬し、一部を自宅に安置する方法です。ご遺骨の量を調整できるため、ミニ骨壷やアクセサリーなどの手元供養品に納めやすいのが特徴です。
全骨安置と分骨安置の選択は「”お墓を持つべきか、持たないべきか” の選択」であるともいえるでしょう。ご家族としっかり話し合うことが何よりも大切です。
手元供養の種類と価格
手元供養にはさまざまな形があります。主な種類とそれぞれの費用について見ていきましょう。
ミニ骨壷 - 手のひらサイズの小さな骨壷
ミニ骨壷は、手のひらに収まる小さな骨壷です。素材は陶器、ガラス、金属などさまざまで、デザインも豊富にあります。
容量や密閉性、骨袋(さらしぬの)の有無などが選ぶポイントです。密閉性が高いものは湿気対策になりますし、骨袋が付いているタイプだと、より丁寧に遺骨を保管できます。乾燥剤を入れられるタイプもあるので、確認してみましょう。
シンプルなデザインなら数千円から購入でき、高級な素材を使ったものでも1万円~3万円程度です。自宅に置いて日常的に手を合わせたい方におすすめです。
遺骨ペンダント - 身につけて偲ぶネックレス
遺骨ペンダントは、ペンダントトップが中空になっていて、遺骨を納められるアクセサリーです。いつも故人と一緒にいたいという方に人気があります。
素材はシルバー、ゴールド、プラチナ、チタンなどがあり、金属アレルギーに対応した商品もあります。最近では、遺骨をダイヤモンドに加工するサービスもあり、より特別な形で故人を偲ぶことができます。
価格は素材によって大きく異なり、シルバー製なら1万円台、ゴールドやプラチナ製だと5万円~10万円以上するものもあります。防水タイプなど機能性に優れた商品もあるので、ライフスタイルに合わせて選びましょう。
遺骨ブレスレット - さりげなく身につけられる
遺骨ブレスレットは、ペンダントと同じく遺骨を納められるアクセサリーです。ペンダントと比べて目立ちにくく、さりげなく身につけたい方に向いています。
デザインや素材、色が豊富で、好みの色を選べる念珠タイプは、男性でも身に着けやすいのが特徴です。シンプルなデザインを選べば、仕事中でも違和感なく着用できます。
価格は1万円~5万円程度です。素材やデザインの複雑さによって価格が変わります。ペンダントよりも比較的手頃な価格で購入できるのも魅力です。
ミニ仏壇 - 自宅に作る小さな供養空間
ミニ仏壇は、従来の仏壇よりもコンパクトで、リビングや寝室などに置けるサイズの仏壇です。仏間のない現代の住宅事情に合わせて、モダンなデザインが豊富にあります。
位牌(いはい)や、おりんなど基本の仏具セットを揃えれば、すぐにお参りできます。ミニ骨壷と組み合わせて使う方も多く、遺影写真やお花を飾って、小さな供養空間を作ることができます。
価格はシンプルなものなら1万円~3万円、高級な木材を使ったものや、仏具セット付きだと5万円~10万円程度です。きちんとした供養空間を作りたい方におすすめです。
インテリア用品 - お部屋に自然に馴染ませる
また、遺影写真、お花、ミニ骨壷などを飾るための小さな飾り台、いわゆる「ステージ」も市販されています。仏壇スペースがない方でも、こうしたアイテムを使って小さな供養コーナーを作り、手元供養できます。
お部屋のインテリアに自然に馴染むため、お子様や女性から人気があります。遺骨が入っていることを他人に気づかれたくない方や、日常的に故人を傍に感じたい方に向いています。
価格はシンプルなものなら数千円から、オーダーメイドや特殊な加工を施したものだと3万円~5万円程度になります。
手元供養のメリット・デメリット
手元供養には以下のメリットがあります。
● 故人をいつも身近に感じられる
● 費用を抑えられる
お墓参りに行かなくても、毎日自宅で供養できますし、遺骨ペンダントやブレスレットを購入すれば外出しているときも「故人と一緒」です。全骨安置の場合は、お墓の購入費用は一切かからず、手元供養商品の出費だけで済みます。
一方で、手元供養には以下のデメリットもあります。
● 家族や親族に反対されることとがある
● 遺骨を紛失・破損するおそれがある
全骨安置は「お墓を持つべき」と考える親族が反対するかもしれませんが、分骨安置ならお墓にも納骨するため、反対されるケースは少ないと思われます。遺骨ペンダントやブレスレットなど、身に付けて自宅から持ち出す場合は、紛失に注意が必要です。
手元供養がNGな宗教はある?
手元供養は宗教的に問題ないのでしょうか?。結論、
イスラム教以外の宗教は、手元供養を禁じていません。
「手元供養では成仏できない」と主張する方の多くは、その宗教の教義や協会・宗派の正式な見解を知らず、先入観で否定しているケースが大半といえるでしょう。
主な宗教・宗派の手元供養に対する見解等を下表にまとめましたので、参考にしてみてください。
このように、イスラム教を除く多くの宗教・宗派では、手元供養は認められています。もしくは、個人の裁量に任されているのです。
※
教皇庁教理省『死者の埋葬および火葬の場合の遺灰の保管に関する指針』の日本の教会での適応について「Ⅲ. 本指針の日本の教会への適応」の箇所の趣旨より
手元供養は法律ではNG?
手元供養は違法行為ではありません。
墓地埋葬法では「墓地以外の場所への埋葬」が禁止されているため、自宅の庭に遺骨を埋めると違法になります。しかし、遺骨を埋めない手元供養は違法ではありません。
墓地、埋葬等に関する法律(通称:墓地埋葬法、墓埋法):
第4条 埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行つてはならない。
引用:墓地、埋葬等に関する法律(昭和23年5月31日法律第48号)
厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/seikatsu-eisei15/
手元供養は、役所の許可や届け出も不要ですが、火葬場では「
埋葬許可証」や「
分骨証明書」を発行してもらい、保管しておきましょう。将来的に、手元供養している遺骨を、一般墓や樹木葬、納骨堂などに「埋葬」することになった際に、霊園に提出する必要があるからです。
墓地、埋葬等に関する法律施行規則(通称:墓埋法施行規則):
第5条 墓地等の管理者は、他の墓地等に焼骨の分骨を埋蔵し、又はその収蔵を委託しようとする者の請求があつたときは、その焼骨の埋蔵又は収蔵の事実を証する書類を、これに交付しなければならない。
2 焼骨の分骨を埋蔵し、又はその収蔵を委託しようとする者は、墓地等の管理者に、前項に規定する書類を提出しなければならない。
引用:墓地、埋葬等に関する法律施行規則(昭和23年7月13日厚生省令第24号)
厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/seikatsu-eisei16/ 樹木葬・納骨堂・散骨と手元供養の併用
分骨安置には、以下の2パターンがあります。
パターン1:兄弟や親戚と遺骨を分け合い、それぞれの自宅で分骨安置する
パターン2:遺骨の一部は手元供養し、残りは樹木葬や納骨堂、散骨で供養する
ここでは、樹木葬、納骨堂、散骨(海洋散骨・山林散骨)の概要について解説します。
樹木葬
樹木葬とは、墓石の代わりに樹木を墓標として、その周辺に遺骨を埋葬する供養方法です。
多くの場合、永代供養が付いており、寺院や霊園が存続する限り、供養が途絶えることはありません。また、承継者(お墓の後継ぎ)がいない方でも利用でき、無縁仏になる心配もありません。
1999年に岩手県のお寺で始まった樹木葬は、その後、急速に全国に広がりました。2025年の時点では、お墓を新たに購入する方の5割程度が樹木葬を選んでいます(一般墓と納骨堂がともに2割程度)。
樹木葬には、故人の遺骨を「他の人と同じ区画に合葬するタイプ」「骨壺に納めたまま土中の納骨スペースに保管するタイプ」があります。
費用相場は5万円~120万円と幅があります(遺骨の埋葬方法や霊園の立地、埋葬人数などにより大きくかわる)。
樹木葬について、さらにくわしく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
納骨堂
建物の中に設けられた納骨スペースに遺骨を安置する施設を納骨堂といいます。
屋内施設のため、季節や天候に左右されずお参りできます。樹木葬と同様、ほとんどが永代供養付きで提供されており、利用者には管理や清掃の負担がかかりません。
多くの場合、最寄駅から徒歩圏内に立地しており、アクセスがよいのも納骨堂のメリットです。
納骨堂について、もっとくわしく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
散骨
散骨は、火葬後の遺骨をパウダー状(1~2mm程度)になるまで砕いて、沖合や山林に撒く供養方法です。散骨業者に依頼する場合、費用相場は5万円~30万円です。
手元供養と同様に、散骨を明確に禁止する法律はありませんが、厚生労働省のガイドラインに従って散骨してくれる散骨業者に依頼するのが一般的です。
散骨について、くわしく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
Q.自宅に遺骨をずっと置いておいても大丈夫ですか?
A.A: 法律上、自宅で遺骨を保管し続けることに期限や制限はありません。お墓に納骨する場合は、四十九日法要や一周忌、三回忌などの法要を一つの目安に、家族の心情に合わせてタイミングを決めるとよいでしょう。
Q.遺骨を自分でパウダー状に粉骨できますか?
A.自分で行うことも可能ですが、細かい粒子が舞うため、専門業者に依頼することをお勧めします。粉骨サービスは1体あたり2万円~5万円程度で利用できます。
Q.手元供養した遺骨は自分の死後どうすればいい?
A.自身が亡くなったあとの扱いも事前に決めておくと安心です。子どもに遺言を残すか、信頼できる人に希望を伝えておきましょう。
Q.ペットの遺骨も手元供養できますか?
A.できます。手元供養品は人用とペット用が区別されていない場合が多く、同じ骨壷やアクセサリーでペットの遺骨も供養している方もいます。ペット仏壇やペンダントも販売されています。
Q.手元供養に仏壇は必要ですか?
A.必要ありません。ミニ骨壷と写真立て、お花を置くだけでも心のこもった供養空間が作れます。もちろん、すでに仏壇がある場合は、その近くに手元供養品を置いて併用することも可能です。
Q.骨壺はどこに置くのがいいですか?
A.決まりはありませんが、遺骨のカビや劣化を防ぐために、日の当たらない涼しい場所に置くのがおすすめです。リビングや寝室など、毎日お参りしやすい場所を選ぶと良いでしょう。また、骨壷のふたを開けたり、素手で遺骨に触れたりすると、カビの原因になるので避けてください。
まとめ
この記事では、手元供養とは何か、その種類や費用、メリット・デメリットについて解説してきました 。また、宗教的に問題ないか、法律に違反しないか、といった疑問にもお答えしました。
手元供養への疑問や不安が解消できたのではないでしょうか。
「お墓の口コミ」では、手元供養とよく併用される樹木葬や納骨堂の情報や口コミも掲載しています。ぜひ参考にしてください。
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