16種類の工事内容別に【お墓のリフォーム】の費用相場を徹底解説
最新編集日:2025年10年19日
お墓が古くなり、修繕が必要になってきたとお悩みではありませんか?
「リフォームにどのくらい費用がかかるのか」「どこから手をつければよいのか」など、初めてのことで不安を感じるのは当然のことでしょう。
この記事では、お墓のリフォームを検討されている方向けに、お墓のプロの視点から、費用相場や工事の流れ、注意点をわかりやすく解説します。
〈記事を読んでわかること〉
● お墓のリフォーム項目・費用相場
● お墓のリフォームの流れ
● お墓のリフォームに関する注意点
● リフォーム後のお墓をきれいに保つ方法
墓石のクリーニングは5千円程度から、研磨・磨き直しは20万円~30万円、基礎工事は40万円~200万円と、お墓のリフォームの費用は工事内容によって大きくかわります。
この記事が、皆さまのお墓リフォームの検討にお役に立てたら幸いです。
お墓のリフォームとは?建て替えとの違い
お墓のリフォームとは、既存のお墓をそのまま活かしながら、部分的に修繕や改良を行うことです。家のリフォームと同じように、古くなった部分だけを直したり、使いやすくしたりします。
一方、建て替えはお墓を完全に取り壊して、ゼロから新しく作り直すことです。リフォームなら既存の墓石を大切に残しながら、必要な部分だけを改善できます。
リフォームの大きなメリットは、建て替えに比べて費用を抑えられることです。また、先祖代々受け継がれてきた墓石に愛着がある場合、その想いを大切にしながら美しい状態に戻すことができます。
法的な手続きも建て替えに比べて簡単で、改葬許可証などの複雑な書類は基本的に必要ありません。霊園の管理者に相談するだけで進められるケースがほとんどです。
お墓のリフォーム項目・費用相場
お墓は雨や風、暑さ、寒さにさらされているため、さまざまな劣化が進行します。以下のような症状が見つかったらリフォームを検討しましょう。
● 墓石本体の劣化
● 文字や装飾の劣化
● 付属品の劣化
● 外柵の劣化
主なリフォーム項目と費用相場は下表のとおりです。
以下、それぞれのリフォーム項目について見ていきましょう。
① 墓石のクリーニング【5千円~1万円】
墓石クリーニングは、最も手軽に始められるリフォームです。プロが高圧洗浄機や特殊な洗剤を使って、長年蓄積した水垢、黒ずみ、シミ汚れ、カビを徹底的に落とします。
② 墓石のコーティング【5万円~15万円】
墓石の表面に特殊なコーティング剤を塗布することで、汚れの付着を防ぐ工事です。クリーニング後に施工することで、美しい状態を長期間保つことができます。特に排気ガスや酸性雨の影響を受けやすい立地のお墓には効果的です。
③ 墓石の研磨(磨き直し)【20万円~30万円】
建立当初のような美しいツヤを復活させる工事です。一度お墓を解体し、石材を工場に持ち帰って専用の機械で表面を削って磨き上げます。クリーニングでは落ちない深いシミや、長年の風化による汚れを除去できます。費用は高額になりますが、長期的な投資として価値のある工事といえるでしょう。
④ 墓石の交換【40万円~】
墓石を交換する工事です。墓石に大きな損傷がある場合に、既存の墓石を新しいものに交換することで、お墓全体の印象を一新できます。石材の種類やデザインを変更することも可能で、現代的なお墓にリニューアルできます。
⑤ 目地の直し【3万円~5万円】
石と石のつなぎ目部分の接着剤を補修する工事です。目地が劣化すると雨水が侵入し、内部の骨壺が濡れてしまう恐れがあります。耐久性の高いコーキング剤を使用することで、10年程度は良好な状態を保てます。
⑥ 墓石の据え直し【10万円~20万円】
傾いた墓石をまっすぐに直す工事です。軽い傾きであれば、墓石を外して据え直すだけで修正できます。お墓参りの際に少しでも傾きを感じたら、石材店に相談しましょう。
⑦ 大規模な基礎工事【40万円~200万円】
基礎部分から傾いている場合の本格的な工事です。一度全体を解体して基礎工事からやり直す必要があります。高額ですが、安全性を確保するためには避けられません。最近では、震度7の地震でも倒壊しにくいとされる免震施工(3万円~10万円程度)も注目されています。
⑧ 文字の塗り直し【1万円~3万円】
戒名や家名の塗料が剥げて読みにくくなった場合の塗り直しです。ペンキやラッカースプレーを使ったDIY対応も可能ですが、仕上がりの美しさや持続性を重視するなら石材店への依頼をおすすめします。
⑨ 文字の彫り直し【15万円程度】
文字そのものを変更する際は、既存の彫刻を削り落として新しく彫り直すため、高額になります。
⑩ 花立て・香炉の交換【5千円~5万円】
花立てはステンレス製への交換がおすすめです。古いプラスチック製や陶器製から交換することで、見た目も機能性も大幅に向上します。香炉がコンクリート製の場合、石材製に変更することで耐久性が向上します。石材製の香炉は墓石との統一感も生まれ、美しい仕上がりになります。
⑪ 墓誌の作り直し・新設【10万円~】
棹石に戒名を刻むスペースがなくなった場合に墓誌を新設したり、墓誌が劣化した場合に交換する費用です。
⑫ 外柵のリフォーム【3万円~120万円】
外柵の劣化状況と目的に応じて、以下のリフォーム内容があります。
■ 部分補修【3万円~20万円】
欠け・割れの補修、ぐらつきの是正、笠石・踏石の差し替えなどの軽微な修理です。劣化範囲が小さいうちに直すと費用を抑えられます。工期は半日~2日程度です。
■ 全面交換【40万円~120万円】
既存外柵を一式撤去して新設する大規模なリニューアルです。デザイン・石種変更、基礎新設などが可能で、お墓全体の印象を一新できます。工期は1~3週間です。
■ 段差解消・スロープ追加【10万円~40万円】
外柵内外の段差切り下げ、スロープ新設、手すり用ベース設置、通路幅拡張などのバリアフリー化工事です。高齢の方や車椅子での参拝に配慮した改修で、工期は2日~1週間です。
⑬ バリアフリー対応【50万円~100万円】
車椅子でお参りする方のためのバリアフリー対応の工事です。以下の①~③の施工が必要で、工事に要する日程と費用は、区画の広さ、既存構造、霊園の規約によって大きく変わります。
① 入口や通路の幅を広げる
区画の入口、入口から拝石(※)までの通路、拝石の幅を広げる必要があります。これは車椅子が通れるだけでなく、どこでも方向転換できるようにするためです。
② 入口をスロープにする
車椅子に乗ったまま区画に出入りできるように、スロープの設置も必要です。
③ 区画内の面を平坦にする
拝石を隙間なく敷き詰めて、車椅子がスムーズに走行できる平坦な面にすることも必須です。
※ 拝石(はいせき・おがみいし):お墓参りがしやすいように、お墓の手前に敷く板状のお石のこと
⑭ 墓所内のコンクリート打ち【3万円~】
墓地内の地面にコンクリートを敷くことで、雑草の発生を防ぎ、管理を楽にします。遠方にお住まいの方や、高齢でこまめな草取りが困難な方にとって、雑草対策は重要な課題です。コンクリートを敷くことで雑草が生えなくなり、お墓参りの度の草取りの重労働から解放されます。
⑮ カロート(納骨室)の改修【10万円~100万円】
お墓の地下にある納骨室の浸水対策やスペースの拡張です。浸水対策では、カロート内に砂利を敷いたり、棚を設置したりして骨壺が水に浸からないようにします。費用は10万円程度です。
地下カロートを地上の「丘カロート」に変更する場合は、60万円~100万円と高額になりますが、浸水の心配はほとんどなく、骨壺を安全に保管できます。
⑯ 五輪塔の建立【20万円~150万円】
五輪塔とは、古い先祖を合祀するための供養塔です。50回忌以上の先祖をまとめて供養したい場合に建立します。
お墓のリフォームの進め方
ここでは、お墓のリフォーム工事の基本的な流れについて説明します。見積もり依頼~開眼供養までの6ステップは以下になります。
ステップ1: 複数の石材店に見積もりを依頼する
ステップ2 :見積もりを比較検討し、契約する
ステップ3 :閉眼供養を行う(必要な場合)
ステップ4 :リフォーム工事が始まる
ステップ5 :工事完了後に立ち会い確認を行う
ステップ6 :開眼供養を行う(必要な場合)
以下に、各ステップについて解説します。
ステップ1:複数の石材店に見積もりを依頼する
まずは石材店に連絡し、現地でお墓の状態を見てもらい、見積書を出してもらいます。
お墓を建てた石材店がわかる場合は、まずその石材店に相談することをおすすめします。最初に建立した時の詳細を把握しており、的確なアドバイスが期待できるからです。
複数の石材店の金額や内容を比較したい場合は、相見積もりを取りましょう。ただし霊園によっては、その霊園内で工事を行える石材店が1社に限定されている場合があります。
多くの場合、見積もりや現地確認は無料ですが、以下の場合は費用が発生することがあります。
● お墓の一部を実際に洗浄して、汚れの落ち具合いを確かめる
● 小さな範囲に塗料を塗って、色味や仕上がりを確認する
● 拝石を一枚外して、下のコンクリートや砂利の状態を確認する
● 寸法入りの計画図を事前に作成してもらう
これらの他にも、費用が発生する条件や金額、どこまでが無料の範囲かを石材店に確認しましょう。必ず、「正式に見積もりを依頼する前」に確認してください。
ステップ2 :見積書の内容を細かく確認し、契約する
次に、石材店から出された見積書の内容を細かい箇所まで確認しましょう。見積書の内容で不明な点があれば、遠慮なく質問してください。丁寧に説明してくれる石材店は信頼できる業者といえます。
複数の石材店から相見積もりを取った場合は、単に安い業者を選ぶのではなく、工事の詳細や保証内容なども含めて総合的に判断した上で契約しましょう。
なお、数十万円規模のリフォームでは、手付金が必要になる場合があります。金額や支払いのタイミングは石材店によって異なるため、事前に確認してください。
ステップ3:閉眼供養を行う(必要な場合)
次に行うのは「閉眼供養(魂抜き)」です。
墓石の移動や解体を伴う工事では、工事開始の前に魂抜きを行うのが一般的です。墓石には故人の魂が宿っているとされるため、僧侶の読経により魂を抜いて「ただの石」に戻してからリフォーム作業を行うのです。日程調整が必要になるため、早めに僧侶と連絡を取りましょう。
閉眼供養では、お布施として3万円~10万円、御車代として5千円~1万円を僧侶にお渡しするのが慣習です。金額は地域や宗派、寺院によって異なるため、不明な場合は僧侶に直接確認しましょう。
なお、閉眼供養を行う義務があるかどうかは、寺院や霊園の規約や契約内容次第です。迷ったら、規約や契約書を確認し、管理者にたずねてみましょう。
ステップ4:工事が始まる
閉眼供養を終えると、工事が始まります。工事期間中は現場に行く必要はありません。進み具合いが気になる方は、石材店に電話すれば状況を教えてもらえます。
ステップ5:工事完了後に立ち会い確認を行う
工事が完了したら、必ず現場で立ち会って確認を行いましょう。
注文内容どおりに仕上がっているか、細かい部分まで丁寧にチェックしてください。最後に残金の支払いを済ませ、完了報告書などの書類を受け取って、すべての工程が終了します。
ステップ6:開眼供養を行う(必要な場合)
リフォーム工事が完了したら、「開眼供養(魂入れ)」を行います。
魂入れとは、新しくなった墓石に再び魂を戻す儀式です。お布施として3万円~5万円、御車代として5千円~1万円を僧侶にお渡しする慣習になっています。
お墓のリフォームに関する注意点
お墓のリフォームを具体的に進める段階になると、いくつか事前に確認しておくべき注意点があります。ここでは、リフォームを円満に進めるために、特に重要な4つのポイントを解説します。
① お墓の「名義人」を確認する
リフォームの契約や申請など、すべての手続きを進める権限を持つのは、霊園やお寺に登録されている現在の「名義人」だけです。最初にこの名義人が誰であるかを正確に確認しましょう。
【確認方法】
● 自宅で「墓地使用許可証」を探す
まずは、自宅に保管されている「墓地使用許可証(永代使用承諾証)」を確認します。そこに氏名が記載されている方が現在の名義人です。
● 墓地使用許可証がない場合は、管理事務所に問い合わせる
墓地使用許可証が見つからない、または、名義人が故人のままの可能性がある場合は、お墓を管理している寺院や霊園の管理事務所に出向く必要があります(個人情報保護法にもとづき本人確認が必要なため)。
② 身近な親族と話し合う
名義人の確認ができたら、次に普段お付き合いのあるご親族(特にご兄弟姉妹など)と、お墓のリフォームについて具体的に話し合いましょう。
たとえあなたが名義人であったとしても、決して一人で話を進めてはいけません。特に注意したいのは、ご兄弟や伯父様など、親族の中心的な立場の方がリフォームに反対しているケースです。
その方の意見を無視して工事を強行すると、後々「なぜ勝手なことをした」と、深刻な法的トラブルに発展する危険性が極めて高くなります。
実は、お墓の手続き上の「名義人」と、法律上の「権利者」は異なる場合があります。お墓の法律上の権利者のことを「祭祀承継者(さいししょうけいしゃ)※」といいます。
リフォーム自体は名義人だけの判断で進めることができますが、後から法律上の権利者である祭祀承継者から訴訟を起こされる恐れがあります。そして、この祭祀承継者が、ご兄弟や伯父様になっている可能性がないとはいえません。
こういった訴訟を避けるためにも、家族や親戚としっかり話し合った上で、手続きを進める必要があるのです。
※ 祭祀承継者(さいししょうけいしゃ): 法律の条文に書かれている用語ではないが、「祭祀を主宰すべき者(民法897条)」を指す法律の世界での通称。
③ 最初にお墓を建てた石材店に相談する
リフォームを検討する際は、まずそのお墓を建てた石材店に相談するのが基本です。
お墓の構造や使用した石材を熟知しているため、話がスムーズに進みます。他の石材店に依頼すると、一から構造を確認する手間がかかるため、費用が割高になる場合があります。
④ 繁忙期を避けて石材店に依頼する
お墓の工事には、依頼が集中する「繁忙期」があります。親族が集まるお盆(7月~8月上旬)やお彼岸(3月・9月)の前は、石材店にとって最も忙しい時期です。
スケジュールが埋まっていると、工事を断られたり、工期が通常より長引いたりする可能性があります。できるだけ繁忙期を避け、気候も安定している秋(10月~12月上旬)や春先(4月~5月)に依頼するのがおすすめです。
リフォーム後のお墓をきれいに保つ方法
せっかくリフォームしたお墓ですから、美しい状態を長く保ちたいものです。ここでは、適切なメンテナンス方法をご紹介します。
お供え物は持ち帰る / 墓石に飲み物をかけない
まずは自分がお墓を汚さないことが大切です。お供え物は必ず持ち帰りましょう。特に食べ物を置いたままにすると、動物に荒らされて墓所が汚れる原因になります。また、お酒やジュースを墓石にかけると変色する恐れがあります。
洗剤や硬いブラシを使わない
自分で掃除するときには、石材を傷めないよう注意しましょう。基本は水洗いのみにし、家庭用洗剤や食器用洗剤の使用は避けてください。柔らかいスポンジで優しく洗い、硬いブラシは使わないことが大切です。
お墓の掃除代行業者を使う
「お墓の掃除代行業者」に清掃を依頼するのもよいでしょう。遠方にお墓がある場合や、高齢で掃除が困難になった方には便利な方法です。大手の「ダスキン」「おそうじ本舗」「美墓ネット(日本香堂)」の他、全国には多くの代行業者があります。
地域やお墓の規模、状態によって変わりますが、相場は費用は1回あたり1万円~3万円で、清掃後は写真付きで報告してもらえます。
お墓掃除だけを依頼できる石材店もあります。ダスキン等はお墓専門の業者ではありませんが、墓石の扱いにくわしい石材店に頼むと安心感も得られるでしょう。
Q.比較的費用が安いリフォームを教えてください
A.比較的費用が安いリフォームは以下の3つです。
● 墓石のクリーニング(5千円~1万円程度)
● 文字の塗り直し(1万円~3万円)
● 花立て・香炉の交換(5千円~5万円)
特にクリーニングは、汚れを落とすだけでもお墓の印象が大きく変わります。
Q.お墓のリフォーム工事はどのくらいの期間がかかりますか?
A.工事内容によって大きく異なります。クリーニングなら半日程度、研磨や据え直しは1週間程度で完了しますが、大規模な基礎工事は1ヶ月以上かかる場合があります。
Q.日頃からお墓のどこを点検しておくとよいですか?
A.お墓参りの際に、墓石の傾きやひび割れ、花立ての水漏れ、目地の剥がれなどに異常がないか確認しておきましょう。気になる点があれば、石材店に相談してください。
Q.リフォーム後の保証はありますか?
A.一概にはいえません。保証の有無、期間、内容は石材店によって異なるため、契約前にリフォーム内容ごとに確認が必要です。
Q.お墓の掃除を業者に依頼できますか?
A.お墓掃除代行サービスを提供している業者があります。費用は1回あたり1万円~3万円程度で、作業後に写真で報告してくれる業者もあります。遠方にお住まいの方や定期的な清掃が困難な方に便利なサービスです。
まとめ
この記事では、お墓のリフォームの内容と費用相場について解説してきました。また、リフォームの流れや注意点、リフォーム後のメンテナンス方法についてもご紹介しました。
特に重要な点は以下になります。
● リフォーム内容によって費用は大きく異なる
● 可能なら複数の石材店から相見積もりを取る
● 独断で進めず、必ず家族や親族と話し合う
● リフォーム完了後の清掃と定期メンテナンスが重要
この記事を読んで、お墓のリフォームの概要を理解できたのではないでしょうか。この記事が、皆さまのお墓リフォームの検討にお役に立てたなら幸いです。
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