墓石のどこに、どんな文字を刻む?費用や注意点も解説
最新編集日:2025年09年25日
お墓を建てるにあたり、墓石に刻む文字についてお悩みではないでしょうか。
一度刻むと修正が難しいからこそ、刻む場所、刻む文字、彫刻の費用や注意点を事前に知っておくことが大切です。この記事では、墓石に刻む文字の基礎知識について、わかりやすく解説します。
〈記事を読んでわかること〉
● 墓石の「どこに」「どんな文字」を刻むのか?
● 墓石の文字の書体・色・彫り方
● 墓石の文字入れの費用相場
この記事が、ご家族が納得のいくお墓づくりを進めるお役に立てば幸いです。
墓石の「どこに」「どんな文字」を刻むのか?
お墓に刻む文字はいくつかの種類がありますが、ほとんどは「竿石(さおいし)」に刻みます。竿石とは、お墓の一番上に位置する縦長の石のことです。
ここでは、墓石のどの部分にどんな文字を刻むのかを説明します。
竿石の正面に「家名」や「宗派の題目」を刻む
家名(「〇〇家之墓」「〇〇家先祖代々之墓」など)を竿石の正面に刻むのが最も一般的です。
家名の代わりに「宗派の題目」(南無阿弥陀仏、南無妙法蓮華経など)を刻む場合もありますが(南無阿弥陀仏は正式には「名号:みょうごう」という)、最近では宗教色を抑えるため、家名を刻むケースが増えています。
竿石の右側面に「戒名・俗名・没年月日・享年」を刻む
戒名とは「仏弟子(ぶつでし)になった証として僧侶から授かる名前です。俗名とは故人の生前の氏名です。
没年月日とは命日(亡くなった日)のことで、一般的に和暦で記します。享年は亡くなった時の数え年ですが、最近では満年齢で記す場合もあります。
記載例:
○○○○居士
山田太郎
令和六年四月三日没
享年七十五歳
なお、戒名・俗名・没年月日・享年は、墓誌(ぼし)に刻むケースもあります。
墓誌とは、戒名や俗名などを刻むための石板で、一般的に竿石に向かって右側に建てられます。竿石に戒名等を刻める人数には限りがあるため、家族全員の戒名や俗名などを記載したい方などが墓誌を建立されます。
竿石の左側面に「建立年月・建立者名」を刻む
竿石の正面に向かって左側面には「建立年月」「建立者名(お墓を建てた人の氏名)」を記します。
記載例:
令和六年三月吉日 建立 山田花子
建立年月は和暦で記します。「建立(こんりゅう)」と並んで「建之(これをたつ)」という漢字もよく使われます。
なお、建立年月・建立者名は竿石の背面に刻む場合もあります。
水鉢の正面に「家紋」を刻む
家紋は水鉢(みずばち)の正面に刻むのが一般的です。花立・香炉(線香を焚く場所)・門柱・外柵・灯篭に小さく刻むこともあります。
洋型墓石の正面に「短い言葉」を刻む
洋型墓石とは、背が低く横長のデザインが特徴の、モダンでスタイリッシュな墓石です。彫刻する文字のデザインの自由度が高いため、個性的なお墓を建てたい方にも選ばれています。
洋型墓石には、家名のほかに「愛」「絆」「感謝」「一期一会」「Thank you」などの、一文字や短い言葉を刻む場合があります。
一文字の例:
「愛」「絆」「慈」「慕」「好」「魅」「情」「縁」「和」「夢」「心」「想」「偲」「宙」「空」「昴」「逢」「隠」「奏」「清」「祥」「曙」「憩」「悠」「浄」「誉」「燈」「恵」「戒」「幸」
短い言葉の例:
「無我」「永遠」「悠久」「静寂」「誠実」「旅立ち」「想い」「偲ぶ」「生きる」「流れ」「希望」「自然」「洗心」「感謝」「お礼」「祈る」「信愛」「再会」「平安」「和楽」「旅路」「笑顔」「やすらぐ」「ほほえむ」「安らかに」「ありがとう」「一期一会」「倶会一処」「Thank you」
刻む文字は家族構成によって変わる
墓石の「どこに」「どんな文字を」入れるかは、お墓に入る家族構成によって変わります。
家族墓(先祖代々のお墓)
先祖代々のお墓では、「竿石の正面」に「家名または宗派の題目」を刻む場合がほとんどです。戒名・俗名・没年月日・享年は、亡くなった順に「墓誌」に追記します。一般的な墓誌は、10名から20名程度の名前を刻める大きさですが、家族構成を考えて適切なサイズの墓誌を建てましょう。
夫婦墓
夫婦のお墓では、「竿石の正面」に「夫婦それぞれの名前」を左右に並べて刻むのが通例です。一般的には向かって右側に夫、左側に妻の名前を刻みますが、地域や慣習によって異なる場合もあります。
個人墓
個人のお墓では、「竿石の正面」に「戒名や俗名、題目、短い言葉」を刻むのが一般的です。
墓石の文字の書体・色・彫り方
墓石の印象は、文字の書体や色、彫り方によって大きく変わります。石材店の担当者に希望を伝え、仕上がり見本(サンプル)を見せてもらいながら、打合せを進めていきましょう。
書体(字体)の種類
墓石の文字には以下の5つの書体がよく使われます。
このように書体によって墓石の印象は大きく変わります。
全国石製品協同組合の調査によると、約6割の方がパソコンフォントを選んでおり、読みやすさを重視する傾向が見られます。
色の種類
墓石の文字色は白・黒・無色が定番で、九州では金が好まれます。
文字色に特別なルールはなく自由に選べますが、使える色を限定している寺院や霊園もあります。
■ 寿陵では朱色を入れる
なお、
「寿陵(じゅりょう)」では、存命中の方の戒名や建立者名に朱色を入れる場合があります。寿陵とは、「生前にお墓を建てること」または「生前に建てたお墓」のことです。亡くなったときに朱色を抜いて、他の方の文字と同じ色に合わせます。
彫り方の種類
墓石の文字彫刻にはさまざまな技法があり、彫り方によってお墓の印象が大きく変わります。
これらの選択肢を組み合わせることで、故人らしさを表現できる独自のお墓に仕上げることができます。迷った場合は石材店に相談し、実際のサンプルを確認してから決定することをおすすめします。
墓石の文字入れの費用相場
ここでは、墓石の文字入れにかかる費用について解説します。内容や作業方法によって、費用は大きく変わるため、事前に相場を把握しておきましょう。
基礎彫刻の費用:5万円〜15万円
基礎彫刻とは、竿石に家名や題目、建立者名、建立年月を刻むことです。
新規でお墓を建てる場合、多くの石材店では基礎彫刻の費用を建墓一式に含めていますが、別途5万円から15万円程度で計上する石材店もあります。
基礎彫刻の費用は、文字数や書体、色入れの有無などによっても変わります。
追加彫刻の費用:3万円〜5万円
追加彫刻とは、新たに亡くなった方の戒名・俗名・没年月日・享年を刻むことで、相場は3万円〜5万円です。
追加彫刻には以下の2パターンがあります。
● 現場彫刻:機材を持ち込んで現場で彫刻
● 工場彫刻:竿石を工場に持ち帰って彫刻
最近では現場彫刻が多くなっています。
工場彫刻の場合は、竿石を取り外して工場に持ち帰り、彫刻後に再度現場に竿石を持ち込んで取り付けます。現場彫刻よりも日数がかかり、費用は高くなりますが、精密な仕上がりが期待できます。
魂抜き・魂入れのお布施:1万円〜5万円
竿石に追加彫刻する際は「魂抜き・魂入れの法要」を行う慣習があります。その際、1万円から5万円程度をお布施として僧侶にお渡しします。なお、一般的に墓誌への追加彫刻の際は法要は行いません。
色入れの費用:1万円~3万円
文字の色入れは1万円~3万円程度が相場です。ただし、色や文字の種類によって費用は大きく変わります。以下に例をご紹介します。
金色は費用が高い
家名や題目に白や黒を色入れする際は1万円~3万円程度ですが、金色は1文字あたり1万円~2万円程度かかります。合計で10万円を越える場合もあります。
寿陵(生前墓)の朱色
寿陵では、存命中の方の戒名に朱色を入れる場合があります。この朱色の色入れは追加彫刻プランに含まれる場合と、5千円前後の別途加算になる場合があります。お亡くなりになった際の朱色の色抜きと白や黒の色入れは1万円から3万円程度が目安です。
色褪せた文字の塗り直し
色褪せした文字の塗り直しは1万円~3万円程度です。応急処置なら、DIY対応(ペンキやラッカースプレー)も可能ですが、仕上がりを重視するなら石材店への依頼をおすすめします。
家紋やイラストの費用
墓石に家紋やイラストを彫刻する費用は、彫刻する場所や時期によって大きく変わります。
家紋の費用
家紋は水鉢(みずばち)の正面に入れるのが一般的です。水鉢や花立(はなたて)への家紋彫刻は数千円から数万円程度です(料金設定例:水鉢1か所3,500円、金箔仕上げ5,000円)。
竿石に小さく家紋を入れる場合、相場は5万円から10万円程度です。ただし、菩提寺の許可なく竿石に家紋を入れることはできません。
イラスト・模様の費用
洋型墓石にイラストを彫刻する場合の費用相場は以下の通りです。
● 新規建立時:10万円~20万円
● 既存墓石への追加:5万円~15万円
費用はイラストや模様の複雑さ、面積、彫り方によって変動します。
墓石に文字を彫刻する際の5つの注意点
ここでは、文字を彫刻する際に特に気をつけたい5つの注意点をご紹介します。
霊園・寺院の決まりを確認する
石材店に彫刻を依頼する前に、必ず霊園や寺院の管理者に決まりを確認しておきましょう。多くの場合、墓地を管理する霊園や寺院が独自のルールを設けているからです(「家名以外の個人的なメッセージは不可」「洋型墓石でも英語は使用できない」「文字の大きさに制限がある」など)。
不適切な言葉を避ける
「死」「終」「滅ぶ」「絶える」「離れる」など、不幸や災いを連想させる「忌み言葉」は避けましょう。「愛」「絆」「心」「和」「感謝」「ありがとう」など、穏やかで、故人への想いを伝える言葉を選ぶとよいでしょう 。
著作権に注意する
故人が好きだった歌の歌詞や、漫画のキャラクターなどを無断で墓石に刻むと、著作権侵害にあたる可能性があります。法律上は、書面で権利者の許諾を得れば彫刻できますが、手続きが複雑な上、将来的なトラブルを避けるために霊園や石材店が彫刻を断るケースも少なくありません。著作権侵害の心配がない、ご家族が考えたオリジナルの言葉や、一般的な言葉を選ぶのが最も安心です。
誤字・脱字を複数人でする
石材店が作成した原寸大の原稿の誤字脱字をチェックしましょう。
ポイント:
● 複数名でチェックする(1人だけでチェックしない)
● 過去帳や位牌と照合する(原稿だけを見て判断しない)
「魂抜き」の法要が必要か確認する
寺院墓地では、竿石に追加彫刻する場合、作業の前に「魂抜き」の法要を行う場合があります。竿石を取り外さず、その場で彫刻するだけなら、魂抜きの法要は不要とする寺院もあります。このように寺院によって決まりは異なるため、事前に確認しておきましょう。
なお、墓誌への追加彫刻では、一般的に魂抜きの法要は行いません。ただし、墓誌の石板を取り外して彫刻する場合は、念のため確認しておくと安心です。
Q.追加彫刻の費用はいくらくらいかかりますか?
A.個人名や戒名の追加彫刻は、1名あたり3万円から5万円程度が相場です。ただし、文字数や書体、色入れの有無、現地彫りか持ち帰りかによって金額が変わります。正確な費用は石材店に見積もりを依頼して確認してください。
Q.文字の彫刻にはどのくらいの日数がかかりますか?
A.現地で彫る場合は1日から数日、工場に持ち帰る場合は1週間から1ヶ月程度が目安です。お彼岸やお盆前などの繁忙期はさらに時間がかかる場合があります。余裕をもって早めに依頼することをおすすめします。
Q.間違って彫った文字は直せますか?
A.完全に元通りにするのは困難ですが、修正方法はあります。文字を削り取って新しく彫り直す方法や、パテで埋めてから上塗りする方法などです。ただし、費用も時間もかかるため、彫刻前の確認を入念に行うことが何より重要です。
Q.家名は必ず入れないといけませんか?
A.いいえ、家名を入れるかどうかは自由です。最近では家名を入れず、故人の好きな言葉や「〇〇〇〇之墓」という形で個人名のみを刻むお墓も増えています。ただし、どちらの家のお墓かわかりやすくする目印としての役割もあるため、迷う場合は家名を入れておくと無難でしょう。
Q.英語の文字を刻むことは可能ですか?
A.はい、使用できます。ただし、お墓の種類や、寺院・霊園の決まりによって注意が必要です。
洋型墓石やデザイン墓石では「Thank you」や「Forever」といった言葉を刻む例は多く見られます 。和型墓石でも彫刻は可能ですが、特に寺院墓地では、使用を認めていなかったり、制限があったりすることも珍しくありません 。
和型墓石の場合は、正面は家名など従来通りの文字にし、側面や墓誌に短い言葉として加えると、全体の調和が取りやすいでしょう 。
いずれの墓石でも、必ず事前に霊園や寺院の管理者に彫刻したい文字の原稿を見せて、承認を得ることが大切です 。
Q.家紋はどのくらいの大きさが適切ですか?
A.家紋の大きさは、文字とのバランスを考えて決めます。一般的には直径5センチから10センチ程度が目安ですが、墓石の大きさや文字の配置によって調整します。文字が主役になるよう、家紋は控えめなサイズにすることが重要です。
Q.戒名はいつ彫るのがいいですか?
A.一般的には四十九日法要や一周忌法要のタイミングで彫ることが多いです。ただし、決まった期限があるわけではありません。お寺や家族のご都合に合わせて決めていただいて構いません。生前に戒名をいただいている場合は、朱色で彫っておき、お亡くなりになった後で色を変更する方法もあります。
Q.生前に自分の名前を彫っても大丈夫ですか?
A.はい、問題ありません。
生前にお墓を建てることを「寿陵(じゅりょう)」と呼び、縁起が良いこととされています 。寿陵では、存命中の方の戒名や建立者名を彫刻し、その文字を朱色にすることがあります 。そして、お亡くなりになった後に朱色を抜き、白や黒など他の文字と同じ色に塗り替えます 。ただし、地域によって慣習が異なる場合もあるため、お寺や霊園に相談してから進めることをおすすめします 。
まとめ
この記事では、墓石に刻む文字について解説してきました。
墓石の「どこに」「どんな文字を」刻むのか?という基本から、ご家族構成に合わせた文字の選び方、書体や色、そして費用や彫刻前に確認すべき注意点までを、網羅的にご紹介しました。
この記事を読んで、墓石に刻む文字に関する悩みや疑問が解決したのではないでしょうか。
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