合葬墓とは?メリット・デメリットから費用相場まで徹底解説
最新編集日:2025年09年27日
少子高齢化が進む現代において、お墓の承継問題に悩む方が増えています。
「子どもに負担をかけたくない」「費用を抑えて供養したい」とお考えではないでしょうか。
合葬墓(がっそうぼ)は、そんな悩みを解決する新しい供養の形として注目を集めています。
この記事では、合葬墓を検討されている方向けに、お墓のプロの視点から、合葬墓の全体像をわかりやすく解説します。
〈記事を読んでわかること〉
● 合葬墓とは何か、永代供養墓や納骨堂との違い
● 合葬墓の費用相場とメリット・デメリット
● 合葬墓が向いている人の特徴
● 合葬墓の申し込み方法と利用の流れ
● 合葬墓でのお参りの方法とマナー
この記事の情報が、あなたやご家族のお墓選びのお役に立てたら幸いです。
合葬墓とは?
合葬墓(がっそうぼ)とは、共同の慰霊碑や供養塔の下の納骨スペースに、複数の方の遺骨をまとめて埋葬する形式のお墓です。合祀墓(ごうしぼ)、合同墓、共同墓とも呼ばれます。
遺骨は骨壺から取り出して埋葬されるため、他の方の遺骨と混じり合い、あとから個別に取り出すことはできません。この点はデメリットといえるかもしれません。
一方で、一般的なお墓のように、個別の墓石を建てる必要はありません。そのため、お墓にかかる費用を大幅に抑えられるというメリットがあります。
核家族化や少子化が進む近年では、先祖代々のお墓を「墓じまい」して、合祀墓に遺骨を移す方も増えています。
合葬墓の歴史的背景
合葬は現代になって初めて生まれた埋葬方法ではありません。
日本には古くから「本山納骨」という合葬の慣習がありました。本山納骨とは、故人の遺骨を分骨して、一部は家族のお墓に、一部は宗派の本山に納める慣習です。
真言宗の高野山は「日本総菩提所」として、宗派を問わず多くの方の納骨を受け入れてきました。浄土真宗の本願寺では、現在でも西日本を中心に本山納骨が行われています。
合葬という供養方法は、日本の仏教文化に深く根ざした歴史ある慣習といえるでしょう。
永代供養墓・納骨堂・樹木葬との違い
ここで、合葬墓とよく混同される「永代供養墓」「納骨堂」「樹木葬」との違いや関係について整理しておきましょう。
合葬墓と永代供養墓の違い・関係
永代供養墓とは、寺院や霊園が永続的に管理・供養するお墓の総称です。合葬墓は永代供養墓の一種です。永代供養墓は遺骨の埋葬形式により、以下の3つに分類されます。
1. 合葬墓:最初から他の方と一緒に埋葬される
2. 個別安置型:一定期間(13年、33年など)は個別に安置され、その後合葬される
3. 個別墓タイプ:永続的に個別安置される
合葬墓は永代供養墓の中でも最も費用が安いタイプです。個別安置期間がある永代供養墓は、その分費用が高くなります。
合葬墓と納骨堂の違い・関係
納骨堂とは、屋内に設けられた遺骨安置施設です。一方で合葬墓は屋外のお墓です。遺骨の埋葬(保管)状態についても下表の違いがあります。
多くの納骨堂では、一定期間(13年、33年など)が過ぎると、遺骨は合葬墓に移されます。なお、合葬後も、寺院や霊園による永代供養は続くため、納骨堂も永代供養墓になります。
合葬墓と樹木葬の違い・関係
樹木葬とは、墓石の代わりに樹木や草花を墓標として、その周辺に遺骨を埋葬するお墓です。樹木葬には、遺骨を最初から合葬するタイプ(合祀型)と、骨壺に納めた状態で個別安置するタイプ(集合型・個別型)があります。
なお、集合型・個別型の樹木葬も、一定の期間(13回忌まで、33回忌まで等)が過ぎると、遺骨は合葬墓に移されるプランが多くなっています。
関連記事:樹木葬の種類
合葬墓の費用相場
合葬墓の費用相場は数万円~30万円程度(遺骨1体あたり)と、お墓の中では安価な部類です。
合葬墓が安価な理由は、墓石が不要で、一つの区画に多くの方の遺骨を埋葬できるからです。運営主体ごとの費用相場は以下になります。
合葬墓の費用の内訳
合葬墓の費用には以下が含まれます。
● 永代供養料:霊園や寺院が永続的に管理・供養するための費用
● 永代使用料:区画を使用する権利料(共同区画でも必要)
● 納骨手数料:1人目の納骨料
● 粉骨費:遺骨を粉末状に砕く場合必要
● 刻字料:慰霊碑に氏名を刻む場合必要
遺骨を個別安置するお墓では、年間管理費(管理料)がかかる場合がありますが、合葬墓は多くの場合、管理費は無料です。
なお、多くの公営霊園では、これらの費用をまとめて「使用料」と呼んでいます。また、宗教儀礼を行わないため、「永代供養」ではなく、「永代管理」という言葉が使われます。
合葬墓のメリット・デメリット
合葬墓を選ぶ前に、メリットとデメリットの両方を理解しておきましょう。
合葬墓のメリット
合葬墓には「費用面」「承継面」「管理面」で、以下の3つのメリットがあります。
費用を大幅に抑えられる:
合葬墓は、個別の墓石を建てる必要がないため、一般的なお墓(約150万円)に比べて大幅に費用を抑えられます(地域・施設により異なります)。
承継者がいなくても利用できる:
合葬墓は、承継者(お墓の後継ぎ)がいない方でも利用できます。また、承継者が途絶えても、霊園や寺院による供養は続くため、無縁仏になる心配はありません。
お墓の管理が不要:
合葬墓では、草取りや清掃はすべて霊園や寺院が行います。利用者には負担がかかることはなく、費用も多くの場合、永代供養料や永代使用料に含まれています。
合葬墓のデメリット
合葬墓には、以下2つのデメリットがありますが、事前に家族や親族にしっかり伝え、話し合うことが大切です。
遺骨が他人と混じり合う:
知らない方々と一緒の場所に埋葬されることに、心理的な抵抗を感じる方もおられるでしょう。「故人が安らかに眠れるのか」といった不安がある場合は、家族でよく話し合って決断することが重要です。
遺骨を個別に取り出せない:
合葬墓では、一度埋葬した遺骨を後から取り出すことはできません。「将来、遺骨を別のお墓に移す可能性があるか?(「改葬」の可能性があるか?)」を、家族で話し合って起きましょう。
合葬墓が向いている人
ここで、「合葬墓はどんな人に向いているか?」についてまとめておきましょう。先に解説した合葬墓のメリット、デメリットを考慮すると、合葬墓は以下のような方に向いています。
合葬墓が向いている方:
▢ お墓の費用を抑えたい
▢ 先祖代々のお墓にこだわらない(「墓じまい」したい)
▢ 承継者(お墓の後継ぎ)がいない
▢ 遺族にお墓の管理の負担を追わせたくない
▢ 遺骨が他人と混じることに抵抗がない
▢ 遺骨の個別安置にこだわらない
▢ 将来、改葬の予定がない
上記がいくつか当てはまる方は、合葬墓が向いています。合祀型(合葬タイプ)の樹木葬や、一定期間が過ぎると合葬される納骨堂を選択肢に入れてみるのもよいでしょう。
関連記事:合祀型樹木葬
合葬墓の申し込み方法と利用の流れ
合葬墓を検討してから実際に納骨するまでの流れを、「①情報収集」「②現地見学」「③契約」「④納骨」の4ステップに分けて解説します。
① 情報収集
まずはご自身の希望条件(立地、予算、管理形態など)を整理します。条件が固まったら、当サイト「お墓の口コミ」のようなポータルサイトを使って、条件に合う霊園をいくつか探します。気になる霊園が見つかったら、複数の霊園から資料を取り寄せて比較検討しましょう。
② 現地見学
候補が絞れたら現地を見学しましょう。実際にご自身の目で雰囲気や管理状況をチェックしましょう。不明な点は霊園のスタッフに遠慮なく質問することが大切です。
③ 契約・支払い
見学を終え、霊園を決めたらいよいよ契約です。契約の際には、以下の書類等を持参する必要があります。
● 身分証明書(運転免許証、マイナンバーカードなど)
● 印鑑および印鑑登録証明書(霊園によっては必要)
● 住民票や戸籍謄本(霊園によっては必要)
● 初期費用(銀行振込の場合は持参不要)
契約時に必要な書類等は霊園ごとに異なるため、事前に確認しておきましょう。
④ 納骨
最後に、実際に遺骨を埋葬することを「納骨」について説明します。
納骨式と納骨作業
民営霊園・寺院墓地の合葬墓では、多くの場合、僧侶による読経や講話などの「納骨式」が行われます。その後、納骨の場にも遺族は立ち合うことができます。
一方で、多くの公営霊園では納骨式は行われません。納骨作業は、霊園管理者(自治体職員または指定業者のスタッフ)だけで行われ、遺族が立ち会うことはできません。
納骨に際して持参する書類
納骨の際は、ご遺骨だけでなく「埋葬許可証」と「墓地使用許可証」を霊園に持参する必要があります(書類の名前は自治体や霊園によって異なります)。
埋葬許可証について:
埋葬許可証とは「遺骨の埋葬許可を得たことを証明する書類」です。以下の手順で入手・提出します。
手順1. 市区町村に死亡届を提出し、火葬許可証を受け取る
手順2. 火葬当日、火葬場に火葬許可証を提出する
手順3. 火葬後、許可証に火葬執行済み印が押されて返却される(この瞬間に、火葬許可証が「埋葬許可証」という名称に変わります)
手順4. 納骨前に埋葬許可証を霊園に提出する
墓地使用許可証について:
墓地使用許可証とは、墓地の区画を使用する権利書に相当する書類です。合葬墓を契約し、費用を入金した後に、霊園から発行されます。
墓地使用許可証は大切に保管しましょう。2人目以降の遺骨を追加納骨する際や、住所や電話番号の変更を霊園に届け出た際に、墓地使用許可証の記載内容を聞かれることがあるためです。
合葬墓でのお参りの方法とマナー
合葬墓には個別の墓石がありません。そのため一般的なお墓参りとは異なる点があります。ここでは合葬墓でのお参りの方法とマナーをご紹介します。
合掌する場所
合葬墓の参拝は、霊園内に設けられた共同の慰霊碑や記念碑の前で行います。多くの場合、献花台や香炉が設置されており、そこで手を合わせて故人を偲びます。
個別の墓石はありませんが、故人への想いを込めてお参りすることに変わりはありません。参拝の際は、慰霊碑に向かって静かに合掌し、故人と心を通わせましょう。
お供え物のルール
供え物のルールは霊園によって異なります。たとえば、本物の花(生花)のお供えを禁止している霊園もあれば、造花を禁止している霊園もあります。お花やお線香、食べ物をお供えしてよいか、などは事前に確認しておきましょう。
服装のマナー
服装については特別な決まりはありませんが、故人を偲ぶ場ですので、落ち着いた服装を心がけましょう。また、霊園内は砂利道の場合もあるため、歩きやすい靴を選ぶと安心です。細かいマナーで迷った時は、霊園のスタッフに遠慮なく相談しましょう。
Q.合葬墓に夫婦で一緒に入ることはできますか?
A.はい、可能です。合葬墓では複数の方の遺骨をまとめて埋葬するため、ご夫婦やご家族が同じ場所で供養を受けることができます。申し込み時に夫婦での利用希望を伝えれば、同時に契約することも可能です。ただし、個別の区画があるわけではないため、物理的に隣同士という概念はありません。
Q.一度合葬墓に埋葬した遺骨を取り出すことはできますか?
A.いいえ、できません。合葬墓では遺骨は他の方と混じり合うため、個人の遺骨だけを取り出すことはできません。将来的に、遺骨を他の場所へ移す(改葬する)可能性がある方は、合葬墓ではなく「確実に遺骨を個別に取り出せるお墓」を選びましょう。
Q.合葬墓は宗教や宗派を問わずに利用できますか?
A.多くの合葬墓は宗教不問で利用できます。ただし寺院墓地の合葬墓では、その寺院の宗派の作法で供養が行われます。
Q.合葬墓に永代供養料以外の費用はかかりますか?
A.永代供養料以外に、永代使用料(区画の使用料)、1人目の納骨料などがかかり、これらの費用の総額が初期費用として提示されます。ただし、重要なのは「費用の総額」だけでなく、「何が総額に含まれているのか?」「何が追加費用になるのか?」を、しっかり確認しておくことです。
Q.合葬墓は生前予約できますか?
A.はい、多くの霊園が生前予約を受け付けています。自分の意思で自分の供養方法を決められ、家族の経済的負担も軽減できます。契約内容については家族とも共有しておくことが大切です。
Q.合葬墓でお盆やお彼岸の法要はどうなりますか?
A.多くの合葬墓では、霊園や寺院が合同法要を執り行います。多くの場合、合同法要の費用は永代供養料に含まれており、無料で参加できます。ただし、お花のお供えなどの任意の供養や、昼食代などは別途費用がかかる場合があります。
Q.合葬墓と合祀墓は何が違いますか?
A.仏教界にも、お墓業界にも厳密な定義はありません。お墓業界では「合葬墓=合祀墓」であるいう見解が多数派です。「遺骨を骨壺に納めたまま同じスペースに保管するのが合葬墓」「遺骨を骨壺から取り出して他の方と同じスペースに埋葬するのが合祀墓」と主張する方もいますが少数派です。
まとめ
この記事では合葬墓の基本的な仕組みから費用相場、メリット・デメリットについて解説してきました。また申し込み方法やお参りのマナーについてもご紹介しました。
特に重要なのは以下の3点です。
1. 合葬墓は費用を大幅に抑えられる一方で、遺骨の取り出しができない
2. 永代供養墓や納骨堂、樹木葬との違いを理解して選択する
3. 施設ごとに参拝ルールが異なるため事前確認が必要
この記事を読んで、合葬墓の特徴や注意点を理解できたのではないでしょうか。あなたやご家族にとって最適なお墓を選べることを願っています。
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