公営樹木葬の相場・民営霊園や寺院墓地との違い|全国の公営霊園も紹介
最新編集日:2025年07年28日
都営霊園や市営霊園で樹木葬はできるの?民間の霊園やお寺の樹木葬との違いは?
そんな疑問をお持ちではありませんか。
近年、自治体が運営する公営霊園でも樹木葬の区画が整備され新しい選択肢として注目されています。公営霊園の樹木葬は運営の安定性と費用面でのメリットがある一方で、抽選や申し込み条件など独特の特徴があります。
この記事では、公営霊園の樹木葬について知りたい方向けに、基本的な仕組みから申し込み方法までを、わかりやすく解説します。
〈この記事を読んでわかること〉
● 公営霊園の樹木葬の仕組み・民営霊園との違い
● 申し込みから納骨までの具体的な流れと注意点
● 公営樹木葬が向いているかの判断基準
この記事を読むことで、公営霊園の樹木葬について理解が深まり、ご自身やご家族にとって最適な選択ができるようになります。
2026年中に神戸市・横浜市が樹木葬区画の募集を開始
樹木葬とは
樹木葬とは、墓石の代わりに樹木や草花を墓標とする区画に遺骨を埋葬する供養方法です。「最後は自然に還りたい」という故人の願いを叶えられ、遺族も四季折々の変化を感じながらお参りすることができます。
樹木葬は多くの場合、永代供養が付いており、継承者(お墓の後継ぎ)がいない方でも契約できます。また、区画やその周辺の草取りや樹木の手入れも霊園が行ってくれます。
樹木葬の発祥は岩手県一関市の祥雲寺(現・知勝院)とされ(1999年11月)、始まってまだ20数年ですが、現在では約半数の方が樹木葬を選んでいます。
公営霊園とは
公営霊園とは、都道府県や市町村が運営する霊園です。倒産の心配がほとんどなく、安心して利用できます。
従来の公営霊園は一般墓や合祀墓のみでしたが、2006年に「横浜市営 メモリアルグリーン」で公営霊園初の樹木葬が始まります。
その後、「都立小平霊園」「越生町樹木葬墓苑(埼玉県)」「都立多磨霊園」でも、樹木葬の募集が開始されました。
しかし全国的には、樹木葬を実施している公営霊園はかなり少ないのが実情です。
公営の樹木葬の3つのメリット
公営霊園の樹木葬には以下3つのメリットがあります。
1. 使用料が安い・管理料がほぼ不要
2. 経営破綻のリスクがほぼない
3. 宗教や宗派の制約がない(寺院系霊園との違い)
以下、それぞれ解説します。
使用料が安い・管理料がほぼ不要
公営霊園の樹木葬のメリットの1つは費用の安さです。
そもそも樹木葬は墓石が不要なので使用料を大幅に抑えられます(一般墓は墓石代だけで100万円以上かかることが珍しくない)。
樹木葬の使用料の相場は、民営霊園では60~70万円程度ですが、公営霊園では10~20万円程度しかかかません。また、多くの公営霊園では管理料も不要です。
経営破綻のリスクがほぼない
公営霊園は自治体が運営しているため経営基盤が安定しています。自治体が破綻したり、霊園が廃園になる可能性はゼロではありませんが、その確率はかなり低いと言えるでしょう。
公営霊園では、民営霊園における運営会社の倒産や、寺院墓地における寺院の経営破綻といった心配はありません。
宗教・宗派の制約がない
公営霊園は宗教の制限がありません。仏教以外の宗教を信仰している方や、家族どうしで宗教が異なる方も利用できます。
多くの民営霊園も宗教不問ですが、一部の寺院墓地では宗旨宗派に制限があります。その寺院の宗派に合わせた合同法要(彼岸やお盆の一斉法要)が行われ、檀家に入ることが樹木葬の契約条件になっている寺院墓地もあります。
公営の樹木葬の5つのデメリット
公営霊園の樹木葬には以下5つのデメリットがあります。
1. 利用できる公営霊園が限られている
2. 地域・居住要件など申し込み条件に制約あり
3. 抽選必須で競争率が高い
4. ペットと一緒に眠れない
5. 区画の場所指定不可・納骨に立ち会えない
以下、それぞれ解説します。
樹木葬区画がある公営霊園はほとんどない
樹木葬を実施している公営霊園は、全国的にはかなり少なく、お住まいの自治体にあるとは限りません。
隣接する県や市に樹木葬を行う公営霊園があったとしても、県内・市内に数年間住んでいる人しか応募できないケースが多いのが実情です。
応募条件に制約がある
民営霊園の樹木葬は、居住地や年齢、宗教を問わず、誰でも申し込めるケースがほとんどです。しかし、公営霊園は誰でも応募できるわけではありません。各自治体が定める応募資格を満たす必要があります。最も一般的な条件はその自治体に居住していることです。
応募資格の例(東京都営霊園の場合):
1. 東京都内に5年以上継続して居住していること
2. 申し込み時点で遺骨を保持していること
3. 他の公営墓地を使用していないこと
参照元:「令和7年度 都立霊園の使用者を募集します」(都庁総合ホームページ)
https://www.metro.tokyo.lg.jp/information/press/2025/05/2025052217
必ず募集要項を確認し、自身が応募資格を満たしているかチェックしましょう。
抽選倍率が高く当選しても納骨までに数ヶ月かかる
公営霊園の多くは抽選で利用者が決まります。人気の高い公営霊園は応募が殺到し、都立霊園では抽選倍率が10倍を超える年もあります。また、運よく当選しても、応募から納骨までには数ヶ月から1年程度かかります。短期間に納骨したい方は民営霊園や寺院墓地の樹木葬を検討しましょう。
区画を指定できない・納骨に立ち会えない
民営霊園では、利用者が空き区画の中から希望の区画を選ぶことができます。しかし、公営霊園では区画の指定はできません。「見晴らしの良い場所がいい」といった希望は通らないのです。これは公平性を保つために空き区画を順番に割り当てる方式になっているからです。
また公営霊園では、原則、家族が納骨に立ち会うことはできません。施設運営を効率化するため、職員は決められた日にだけ埋葬作業を実施しているからです。
ペットと一緒に眠れない
公営霊園ではペットの遺骨を人と一緒に埋葬することはできません。ペットと一緒のお墓を希望される場合は、ペット霊園や一部の民営霊園を探しましょう。ペット共葬可能な霊園は首都圏では増えていますが、地方にはまだ少ない点には注意が必要です。
公営樹木葬の費用相場
ここでは、公営樹木葬の費用について解説します。
公営樹木葬の費用相場
公営樹木葬の費用相場は
1体あたり10~20万円程度です。下表のように10万円を切る公営霊園もあります。
管理料
ほとんどの公営霊園では管理料は不要です(管理料とは、霊園内の清掃や樹木や草花の管理にかかる費用のこと)。つまり、公営霊園でかかる費用は多くの場合、使用料のみです。
民営でも合祀型の樹木葬(遺骨を骨壺から取り出して土中に埋葬する形式)なら、ほとんどの霊園では管理料はかかりません。
しかし、個別型の樹木葬(骨壺に納めた遺骨を個別保管する形式)では、毎年数千円から1万円程度の管理料がかかります。
民営霊園・寺院墓地の特徴(公営霊園との違い)
樹木葬には公営霊園だけでなく民営霊園や寺院墓地という選択肢もあります。ここでは、民営霊園と寺院墓地の樹木葬の特徴について説明します。
民営霊園の樹木葬
民営霊園とは企業や公益法人が運営する霊園です。公営霊園と比較すると以下の特徴があります。
● 費用は公営より高い傾向
● 永代供養が付いており合同法要が営まれる
● ペットと一緒に眠れる霊園もある
合同法要とは春と秋の彼岸やお盆の一斉法要のことです。多くの民営霊園の樹木葬の使用料には合同法要料が含まれています。
一方で、公営霊園は宗教的供養(日々の読経や合同法要等)を行いません。そのため公営霊園の募集要綱には「永代供養」ではなく「永代管理」という言葉が使われています。
寺院墓地の樹木葬
寺院墓地とは寺社が管理・運営する墓地のことです。樹木葬の区画は多くの場合、境内にあります。公営霊園と比べると、寺院墓地には以下の特徴があります。
● 費用は公営・民営より高い傾向
● 永代供養が付いており合同法要が営まれる
● 葬儀や法要など仏事全般を任せられる
● 宗教宗派の制限や、檀家加入を求められる場合がある
寺院墓地では僧侶による手厚い供養を受けることができます。仏教式の供養を望む方や、仏事全般を任せたい方は寺院墓地を検討してみるとよいでしょう。
公営霊園、民営霊園、寺院墓地のどれを選ぶか
ここでは「公営霊園、民営霊園、寺院墓地のどれが自分に向いているか」について解説します。
寺院墓地が向いている方
仏式の手厚い供養を望む方には寺院墓地が向いています。下表を参考にしてください。
公営霊園の申し込み~納骨までの流れ
公営樹木葬の申し込みから納骨までの流れと、重要な注意点について解説します。自治体によって内容が異なるため、必ず募集要項を確認しましょう。
年間を通じて常に募集している公営霊園もありますが、多くの公営霊園は抽選で利用者を決めています。以下、「抽選制の公営霊園の応募から納骨までの流れ」について説明します。
ステップ1:募集情報の確認
自治体のホームページで募集情報をチェックする(多くの公営霊園は年に1回しか募集がないため、申し込み時期を逃すと次の年まで待たなければなりません)
ステップ2:応募
募集期間内に郵送またはインターネットで申し込みを行う(応募人数が多い場合は抽選になる)
ステップ3:抽選結果の通知
抽選結果が通知される(通知されるまでの日数は自治体によって変わる)
ステップ4:書類審査
当選者は住民票や戸籍抄本などの必要書類を提出し、申し込み条件を満たしているかどうかの審査を受ける(一定期間その自治体内に住んでいることが条件の場合が多い)
ステップ5:使用料の支払い
書類審査を通過したら樹木葬の使用料を支払う(管理料がある場合は管理料も支払う)
ステップ6:使用許可証の交付
入金確認後に使用許可証が交付される(納骨の時に必要になるので大切に保管しておく)
ステップ7:納骨
霊園の管理事務所で納骨の日時を予約する(ほとんどの公営霊園では、納骨は職員のみで行われるため、家族は納骨に立ち会えない)
以上が一連の流れになります。応募から納骨までに数ヶ月から1年程度かかる公営霊園もあるため注意が必要です。
また、使用許可を得てから納骨するまでの期間も自治体ごとに決まっています。当選して使用許可を得た後も、利用規約を読み直しておきましょう。
樹木葬がある公営霊園一覧
樹木葬がある公営霊園を下表にまとめました。常に募集している自治体もあれば、年に1回や数年に1回しか募集しない自治体もあります。
なお、下表の情報は2025年7月時点の各自治体の公式サイトから抜粋したものです。最新の募集状況や費用等については、それぞれの自治体にお問い合わせください。
2026年中に神戸市・横浜市が樹木葬区画の募集を開始
現状、民営霊園より樹木葬区画が少ない公営霊園ですが、神戸市と横浜市では新たに樹木葬区画の工事が進んでいます。
神戸市立墓園
神戸市は「ひよどりごえ森林公園(神戸市北区)」内に樹木葬墓地を整備中で、2026年3月に募集を開始し、同年夏には納骨が可能になる見込みとなっています。
出典:神戸市ウェブサイト(
https://www.city.kobe.lg.jp/a60186/newgrave.html)
概要:
● 整備予定地:ひよどりごえ森林公園内
● 整備概要:墓域面積1,200平方メートル
● 埋蔵予定数:約1,600体(供用年数20年・1年あたり80体)
● 埋蔵方法:粉状にした焼骨を土と混ぜて埋蔵し、自然分解を促進する
● 埋蔵形態:個々の樹木を墓標とせず、エリアとなる樹林内に一定の間隔を設けて順番に埋蔵する
● 供用期間・管理期間:供用期間を20年間、その後30年間をかけて自然遷移させ、50年後に山林に戻す横浜市営舞岡しぜん墓園
舞岡しぜん墓園(旧(仮称)舞岡墓園)は、横浜市が戸塚区舞岡地区に整備中の緑豊かな墓園です。募集は2026年4月以降に開始され、2027年3月の完成を目指して工事が進んでいます。
概要:
● 住所:神奈川県横浜市戸塚区舞岡町字下谷279-2
● 敷地面積:約46,921平方メートル
● 埋蔵予定数:樹木型 1,500体、樹林型 1,500体
● 使用期間:永年
● 使用料:樹木型 220,000円 / 体、樹林型 100,000円 / 体
● 管理料 66,000円 / 体
Q.住んでいる自治体に公営の樹木葬があるかを調べたいのです
A.「〇〇市 樹木葬」「〇〇市 公営霊園」などのキーワードでインターネット検索してみましょう。窓口に電話問い合わせすると募集状況を教えてくれる自治体もあるでしょう。
Q.公営霊園の樹木葬は生前予約できますか?
A.自治体によって異なりますが、多くの場合は既に遺骨を保持していることが応募条件になっています。親などの故人に加えて自分の分を予約できる自治体もあります。
Q.抽選に外れた場合、他にお墓の手段はありますか?
A.公営霊園にこだわらず、民営霊園や寺院墓地の樹木葬を検討してみましょう。空き区画があればすぐに契約できますし、多くの場合、生前予約も可能です。
Q.公営霊園の樹木葬ではペットと一緒に眠れないのですか?
A.公営霊園ではペットの遺骨を人と一緒に埋葬することはできません。「ペット共葬可」の民営霊園や寺院墓地を探すとよいでしょう。
まとめ
この記事では、公営樹木葬の「基本的な仕組み」「費用相場」「メリット・デメリット」「申し込みから納骨までの流れ」など、実際に検討する際に必要な情報をご紹介しました。
公営樹木葬の最大の魅力は、費用の安さと運営母体の信頼性です。使用料は10万円から20万円程度で、多くの場合管理料もかからないため、経済的負担を大幅に軽減できます。また、倒産の心配がなく、宗教・宗派の制約もありません。
一方で、樹木葬を実施している公営霊園は全国的に少なく、自治体内に住んでいることなどの条件があり、抽選倍率も高いという現実があります。また、納骨に立ち会えない、ペットと一緒に眠れないといった制約もあります。
費用を最優先に考え、抽選に落ちても根気強く応募できる方には公営霊園の樹木葬が適しています。一方、急いでお墓を決めたい方や区画にこだわりたい方、ペットと一緒に眠りたい方には民営霊園や寺院墓地の樹木葬の方が向いているでしょう。
公営霊園、民営霊園、寺院墓地、それぞれのメリット・デメリットを理解した上で、ご自身やご家族の希望に最も合った選択肢を見つけてください。本記事の情報が、あなたの納得のいくお墓選びのお役に立てれば幸いです。
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